最近の事例として、あるクライアント様がご経験されたケースをご紹介いたします。その方は、有効なグリーンカードを所持しているにもかかわらず、米国外の旅行履歴や居住歴に関する詳細な資料提出を求めるRFE(書類提出要求)を受け取られました。提出を求められた書類は、以下のとおりです。
- 2000年XXX月以降、LPR(永住権取得者)となった以降の詳細な旅行履歴
- その期間に発行されたすべてのパスポートのコピー(入出国のスタンプを含むページ)
- 2000年XXX月以降の居住履歴および、国外滞在期間についての説明
- 給料明細書、扶養控除を含む申告済み米国税申告書、公共料金請求書、所有不動産の権利書、抵当証書、賃貸契約書など、居住および就労履歴を証明できる資料
このような要求は、2009年2月6日にUSCISが発表した*「Form I-90 の審査に関する改訂ガイダンス(Revised Guidance Pertaining to the Adjudication of Form I-90)*」といった既存の方針に照らして、一貫性に欠けるものと考えられます。同指針においては、申請者は、正式な手続きを経て永住権を放棄または取り消されるまでは、そのステータスを保持し続ける旨が明確に規定されており、その証明も当然に保障されています。
法的原則およびUSCISの指針
2009年のUSCISの memoには、I-90申請の審査過程において、申請者の米国内外の居住意図に関する質問は適切でなく、また、審査の結果に影響を与えるべきではないと明記されています。具体的には次のとおりです。
- 永住者の資格は、正式な法的手続きにより取り消されない限り有効であり続ける
- 審査結果は、米国外の旅行や居住に左右されるべきではない
- 外国居住または居住意図に関する質問は、不適切かつ無関係なものとみなされる
さらに、同Memoは、非刑事上の理由に基づく退去リスクの可能性についても、最初の審査の後に別途捜査し、例えばNTA(Notice to Appear:出頭命令通知書)の発行等の執行手続きにより対応すべきと規定しています。I-90申請に関連して、刑事履歴や裁判記録の提供を求めるRFEsの発行は、もはや正式に認められていません。こうした情報収集の権限はICE(移民・検査局)に属し、申請過程には関係しません。
これらの方針と判示にもかかわらず、一部の担当官による不適切なRFEsの発行が見受けられることは、今後の運用において注意を要します。特に、申請者の長期間の国外滞在歴や居住意図に関わる質問は、法的根拠の乏しいものであり、慎重な対応が求められます。
我々としましては、当該動向について十分に留意し、必要に応じて法的見解を提供しながら、クライアントの権利と利益を守るための支援を継続してまいります。
何かご質問やご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
現状の実務上の懸念事項とその影響
米国市民権・移民サービス局(USCIS)が明確に示した方針にもかかわらず、現政権下においても一部の担当官が、長年にわたる旅行履歴や居住意図に関する不適切な質問を含むRFEs(書類提出要請)を発行し続けている現状があります。これらのRFEsは、既存の政策と乖離しており、不当な内容となるケースも散見されます。結果として、こうしたRFEsが、不適切に申請者の永住権放棄を示唆したり、将来的に不利益となる証拠収集に利用されたりする可能性が懸念されています。
法的観点から申し上げますと、申請者のグリーンカード所持資格は、正式な法的手続きによる取り消しを受けない限り、法律上保護されています。資格の喪失・取消は、米国裁判所の移民裁判官の決定に委ねられるものであり、USCISの単独判断ではありません。また、I-90の審査過程において刑事記録やその他の証明書類を提出させることに、法的根拠は存在しません。
注意喚起と適切な対応策
このようなRFEsに対応しない場合、特に現在の行政環境下では、申請が不利益に働き、結果的に申請拒否につながるリスクが高まっています。これらのRFEsの発行には過剰な要求も見られ、慎重な法的判断と対応が求められる状況です。
これらのRFEsが新たな政策の転換を示すものなのか、それとも特定の担当官による権限の誤解に基づく個別の判断なのか、現時点では明確になっておりません。海外渡航歴が長い、または頻繁に国外に出ている申請者にとっては、この種の質問は特に慎重に扱う必要があります。必要に応じて、法的手続きによる異議申し立ても検討すべきです。
結論
総じて、I-90によるグリーンカードの更新手続きにおいて、USCISは申請者の身元確認および永住資格の有効性の確認のみに専念すべきです。国外の滞在履歴や居住意図に関する質問は、不要であり、不適切なものであるため、必要に応じて抗議し、反論すべきです。
クライアントの皆さまにおかれましては、こうした動向への注意を怠らず、RFEsに直面した際には、適切な法的助言を求めることが必要です。制度の変化が進む中、慎重な対応こそが、合法的なステータスの維持に不可欠となります。
私どもは、こうした複雑な状況においても、適切な戦略的アドバイスとサポートを提供いたしますので、ご相談はいつでもお気軽にお問い合わせください。