
米国での起業
日本人あるいは日本企業が米国内でビジネスを行う場合、代表的な会社形態としては、下記の形態があります。
- 個人経営(Sole Proprietorship)
- パートナーシップ(Partnership)
- リミテッドパートナーシップ(LP)
- 株式会社(Business Corporation (Inc./Co./PC) – C CorporationやS Corporationなど)
- リミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)
- 駐在員事務所(Rep Office)
- 日本法人の支店(Branch Office)
- リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)
株式会社(Business Corporation (Inc./Co./PC))
株式会社を設立するには、州当局指定のフォームを法人定款を設立する州の州長官に提出し、法人登録しなければなりません。法人定款に記述が義務づけられていない法人規約は、別途Bylawsと呼ばれる付随定款に定めることができます。法人は、各州の会社法により厳格に規制されており、株式会社の場合、各出資者(つまり株主)の責任は、各々の出資額の範囲内に限られます。管理運営上の決定権は取締役会に委任し、日々の会社経営は通常、取締役会が選任した役員に委ねられます。パートナーシップと異なり、株式の譲渡が比較的容易にでき、出資者の死亡・交代により、会社そのものの存続が影響を受けることは、あまりありません。一方、株式会社の最大のデメリットは法人税が課税される点であり、株主への利益配分に対して法人税および個人所得税が課され、二重課税となる場合があります。
Limited Liability Company (“LLC”)
リミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)
LLCは、株式会社の有限責任というメリットと、パートナーシップの税法上の利点を併有した、ハイブリッドな事業形態です。LLCの出資者は「メンバー」と呼ばれ、事業体の利権所有者でありながら、経営管理に自由に参加することが出来ます。また、必要に応じて、経営管理を任せる「マネージャー」を任命することも出来ます。経営上の規定に関して柔軟性に富むLLCは、近年多くの投資家によって利用されています。
駐在員事務所(Rep Office)
実際に米国内で事業を行う前に、準備段階として現地での情報収集を行う場合に、よく利用される形態です。事務所の活動が、準備的或いは補助的な範囲に限られている場合、州政府への申請手続きもなく、また法人税の対象にもならないため、営業活動を行う以前の段階では便利な形態です。
日本法人の支店(Branch Office)
外国に限らず州外の法人が特定の州で事業をおこなうためには、その州に「外国法人」としての事業登録を行わなければなりません。そのためには、各州の州務長官に許可証を申請しなければなりません。外国企業が米国内に現地法人を設立する代わりに、自国法人の支店として米国内での事業を行う場合のメリットとして、米国支店の損失を日本本社の利益と相殺できることが挙げられます。一方でデメリットとしては、米国支店が負った債務や責任を支店が履行できなかった場合、日本本社に責任追及が及ぶことになるということです。これには、法的責任も含まれ、米国支店に対して訴訟が起こされた場合でも、日本の本社が被告に加えられる可能性が高くなります。また、日本側の会計処理が米国税務局の追及を受けることがあります。
個人経営(Sole Proprietorship)
日本におけるいわゆる自営業がこれにあたります。個人経営の場合、事業の設立に法的な手続きを必要としませんが、その事業が州あるいは地域によってライセンス取得を義務づけられている事業である場合、ライセンス登録が必要となります。また、個人以外の名称でビジネスを行う場合は、その事業名を商用名(Trade Name)として州に登録しなければなりません。個人経営の場合、法人登録の必要がなく、法人課税の対象とならないため、手軽に事業が行えます。ただし、経営者の責任が無限であり、事業損失を補うために経営者の個人資産を失う危険性があります。
パートナーシップ(Partnership)
パートナーシップには大きく分けて、General Partnership(GP)とLimited Partnership(LP)の2種類があります。その他、州によっては最近これらの派生形態が認められています。GPは2名以上のパートナーが共同で事業を運営し、利益を分配することに合意した場合に設立されます。各パートナー(ゼネラルパートナー)は、事業の債務・責任の全てに対して連帯責任を負う無限責任社員となり、一方、LPは、1名以上のゼネラルパートナーと、1名以上のリミテッドパートナーが共同出資し設立・運営する事業体です。LPにおけるリミテッドパートナーは、各々の出資額の範囲内でのみ債務責任を負います。これに対し、ゼネラルパートナーはGPにおける場合と同様、個人的な無限責任を負います。事業体の経営は、通常ゼネラルパートナーに任され、リミテッドパートナーは事業経営に参加しない、いわゆる「サイレント・パートナー」となります。パートナーシップのメリットは、税金申告の際、法人課税がされないため事業の損益を直接パートナー個人の所得と相殺して申告することができます。
以上、アメリカにおける会社設立は、ご自身のビジネス形態に合った事業体系を検討する必要があり、ビザ問題に限らず、税金面での対応についても検討が必要と考えられます。デラウェア州など税制面でメリットがある州もあります。将来的に会社を大きくしたい場合や、株主構成をどうしたいかなどによっても、事業形態の選択は変わってきます。一般に会社設立の際は、州当局への登記、IRSへのFEIN取得、定款の作成、議事録の作成、株券や株式台帳の作成、資本金の送金など、一連の作業を伴います。それらの資料は会社の存在を示す上でも、ビザ申請上は必要な書類となりますので、必要な資料はあらかじめ移民弁護士に確認を取るなど、計画的かつ戦略的な対応が必要です。なお、当事務所では基本的な会社設立に対する代行手続きサービスを行っております。
*上記の説明は基本的な情報提供にとどまるものであり、その内容については、当事務所は一切の責任を負いかねます。内容は常に変わる可能性がございますので、詳しくは当事務所、会社法専門弁護士、または専門家にお問い合わせいただきますよう、よろしくお願いいたします。
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