2015年度新規H-1B申請が上限に到達。他のビザオプションは?

2014年4月1日より申請受付が開始された来年度新規H-1B申請は受付期間である最初の一週間で年間上限発給数(通常枠:6万5千件、米国修士•博士号枠:2万件、合わせて8万5千件)の倍以上となる172,500件もの申請が押し寄せたことで早々に受付が締め切りとなりました。この状況は弊社でも予想していましたが、移民局は早速4月10日に正式に受領する申請書類を選び出すための無作為抽選を実施しました。その後、無事当選した方々の受領書が移民局より届き始めております。一方、抽選に漏れた申請書に関しては申請書類一式そのものが戻ってくることになります。実際に申請した方が抽選に当選したかどうか判断がつかないこともあるでしょうが、最終的には受領書が届く、または申請書そのものが戻ってくることで、自身の抽選結果を把握することになります。とりわけ特急申請された方で、5月に入っても受領書が届いていないようであれば、抽選に漏れてしまっている可能性が高いようにも思われます。

さて、見事に抽選に当選した方につきましては、今後移民局より正式に審査が開始されるのですが、現在のH-1B申請におけるポジションの傾向、また審査の難易度に関してはどのような状況なのでしょうか? 最近の統計データはまだ確認できておりませんが、はっきり言えることは審査自体が大変厳しくなっているということです。年々認可率は下降する傾向にあり、とりわけコンピューター系以外のポジションに関してはその難易度が高まっているとも言えるでしょう。ちなみに2013年7月の移民局発表によれば、2012年度から2013年度にかけてコンピューター系のH-1B認可者が15%増えているのに対し、それ以外のポジションのH-1B認可数は20%減っているという興味深いデータがあります。

事実、アメリカ労働局の発表においても、コンピューター系のポジションに関するH-1B申請が未だに大多数を占めているということで、2014年度のデータではコンピューター系のポジションが全体の70%を占めたということです。なお、移民局へのH-1B申請のためには予めアメリカ労働局より労働認定(LCA)を受けなければならず、その審査過程において、労働局はポジションや給与額、就労期間など査定、審査します。参考までにコンピューター系以外の職種については5%がそれ以外のエンジニア、また同じく5%がファイナンシャルスペシャリストや会計士などの金融系のポジションと続き、残りの20%がそれら以外の業種、ポジションという全体像となっているようです。

もちろん、コンピューター系のポジションが業界としても活動が活発な分野であることも否めませんが、一方で、移民局による審査傾向においてもコンピューター系以外のポジションは厳しく審査されているということの裏付けとも捉えることはできるでしょう。言い換えれば、いわゆる“ビジネス系”のポジション(オペレーション、ビジネス開発、マーケットリサーチ、パブリックリレーションなど)に対しては審査が難しく、多くの場合、質問状なしにあっさり認可をうけることはとても難しくなっています。セールス系のポジションはここ数年難しい傾向にあった状況で、更に今ではH-1Bでは当然該当するとも考えられるマーケットリサーチ系のポジションが厳しく審査され始めているという事実はビジネス系のH-1Bポジションを考えている方にとっては非常に悩ましい傾向とも言えます。事実、移民局による「エントリーレベルのパブリックリレーションのポジションはH-1Bのポジションに条件として求められる専門職には該当しない」という判断結果を支持する連邦地方裁判所の判例(2014年4月24日)があります。

ではこれらの状況を受け、今後H-1Bビザ申請者・企業はどう対応していくべきなのでしょうか? 抽選、そして厳しい審査状況を踏まえると、特に採用する企業側においてはプランB、つまりバックアッププランを持つことも重要となってくるでしょう。例えば、一社から複数の新規H-1B申請書を提出した企業においては、統計的には半分以下しか抽選に当たらず、結果的に無事に全員認可されたとしてもH-1B従業員による人材確保は実現しません。企業の立場からすれば、EビザやLビザが条件として該当するようであれば、それも検討すべき事項です。またアメリカの大学を卒業した外国人がOPTを使用して就労(正確にはトレーニング)することも可能ですので、条件が整えば、OPT保持者の雇用も考えられます。ただOPTには期限があり、その期限後の継続的雇用に関しては引き続き、問題は残ります。確実性という意味ではやはりアメリカ市民や米国永住権保持者の採用も同時に進めていくことも会社の体力を維持するためにも無視できない状況です。

SW法律事務所

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