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H-1Bビザの審査状況 (その2)

H-1B申請に対し質問状が多発している現状は前の記事でもお伝えの通りですが、その背景には、アメリカ移民法に関わる改革は新政権の掲げる重要改革事項の一つで、H-1Bビザについても、最も熟練した高額所得者に対してのみ発行されるべきである、との大統領命令に従い、移民局は、このレベル1の給与額を引き合いに質問状を発行することで”大統領指令の実行”を遂行する傾向が見受けられます。

同内容の申請において、特に移民局は今年4月に受け付けた新規H-1B申請(抽選の対象となったH-1B申請)に対し、多くの質問状を発行しています。つまり移民局は本来専門職であるべきH-1Bビザのポジションに対して、エントリーレベルの給与額をオファーすることはH-1Bの条件を満たさない、との見解を示し始めたわけです。

今後は新規H-1Bケースに限らず、H-1B延長や転職の申請等に対しても同様の対応が予想されます。例えば3年後の延長申請については、既に3年の経験がある従業員の延長申請を行うこととなり、その申請上のオファー給与額がエントリーレベルのレベル1賃金に基づいているとすれば、その不適格性を指摘される可能性は十分に予想できます。言い換えれば、本来H-1B申請の条件の一つであるポジションに関連した相当する学士号(Bachelor’s)以上の学歴を持っている、という最低条件に加え、3年の職務経験が加わることは、その特定の申請者に対するH-1B申請に対し、エントリーレベルのポジションとしてレベル1の給与をオファーすべきではない、ということを意味することになります。

これまで移民局は申請者の経歴やポジションの複雑性、専門性に応じた給与レベル設定について厳しい指摘はなく、2回目、3回目以降のH-1B申請においても、レベル1の給与設定に対し、多くは指摘の対象とはしてきませんでした。しかし今後は、それらケースに関しても質問状発行の対象となることは推測できます。事態の状況がより深刻なのは、現時点で、関連したこの質問状に対し、回答して認可を受けたという報告が全米弁護士協会から一切の報告が上がってきていないという点です。今後の政府による対応は注目です。

移民局によるビザスポンサー会社への突然の監査訪問の現状

アメリカ移民局は2014年、公式にL-1Aビザ(主にマネジャー、エグゼクティブの駐在)及びR-1(宗教)ビザを持ってアメリカにて就労している外国人に対し、その雇用実態の確認のため、それらビザ保持者のビザスポンサー会社への監査を行う指針を発表しました。こちらH-1Bビザに加えての監査対象ビザの広がりを具体的に示したわけですが、その一方で、ここ最近、L-1ビザのもう一つのL-1B(専門職)に対しても、その後の公式な発表なく会社への突然の監査訪問が実施されているとの報告があります。実際、移民局はこの状況に対するコメントは発表してはおりません。アメリカ移民局は、このL-1Bへの新しい監査対象の広がりについて、とりわけウェブサイトにおいてL-1とだけ明記し、L-1AとL-1Bを区別はしていないことからも、それを根拠に実施しているのではないかとも考えます。

一方で、興味深いことに、アメリカ移民局ウェブサイトには監査は移民局による認可後に行われるとも書いてある一方で、現実態としてL-1Bビザも含め、アメリカ移民局への延長申請を行い、その結果が出る前の審査段階において、監査を受けたとの企業からの報告も上がってきています。これは、新しい傾向です。

このような状況の中、アメリカ弁護士協会は、今後L-1B保持者を対象とした監査が更に増えるとの見解を示しており、更に、これまでは移民局が外注した監査官による監査だったものが、移民局審査官が直接監査を行う実態も示しています。

ここ最近では、ある監査にて特定の対象者に対して一つでも詐欺的な要素が発覚すれば、同社の他のビザ保持者にも監査の範囲が広がることになっているようです。

この傾向は最近顕著に見られるもので、これら監査のL-1B保持者への広がりがトランプ政権の指令が背景あるか否かははっきりしませんが、現状、L-1Bどころか、新政権では全ての関心が非移民ビザ全種類を対象に向けられ始めています。

そこで、特に会社の人事担当、更にはビザ保持者本人が心得ておくべきことは、会社の規模に関わらず、常に突然の監査の対象となっていること、また監査官が来た際に備えて、申請書の内容を常に認識しておくことが大事です。また、H-1B、R-1、L-1A/L-1Bビザに限らず非移民ビザを持つ全従業員が対象の可能性となることを心得ておく方が良いでしょう。

職務内容、就労場所、給与額など、もちろん事実に沿って申請書が作成されているかと思いますが、その内容に矛盾なく雇用されているか確認することです。もし、申請書の内容と異なる変更がある場合は、その度合いに応じて、移民局への修正申請が必要でしょう。一旦、認可されたビザでも監査官が不服と唱えれば、いつでもビザ取り消しの対象となりますので、今後に備えて、注意が必要です。

H-1Bビザの審査状況 (その1)

新政権のもと、ビザ申請審査が非常に厳しくなおり、H-1Bビザも例外ではありません。更にH-1B申請はプレミアム申請(審査が15日以内に行われる特急申請)が使えないなど不便な状況が続いていました。そこで、H-1Bの現状について2回に分けてお知らせします。

まず、明るい話題として、H-1B申請はプレミアム申請について、こちら徐々に再開に向かっています。こちら4月以降H-1B申請については、プレミアム申請ができない状況が続いていましたが、日本人の多くが該当する申請カテゴリーでは、今年4月に受付開始され、抽選となった全新規(2018年度)H-1B申請に対し、9月18日よりプレミアム申請へのアップグレードが可能となりました。更に、米国弁護士協会の報告では、まだ正式ではないものの、10月3日までには延長や転職も含む全てのH-1B申請でプレミアム申請が再開となる見通しです。この記事が読まれている頃には正式となっていることでしょう。

このプレミアム申請の再開を受け、早々にH-1Bの結果を知りたかった方は朗報と言えるでしょう。運転免許証やその他資格更新など正式な滞在許可認可が必要な方はアップグレードを望むところでしょう。ただ一方で、現在の厳しい審査状況を念頭におく必要があります。プレムアム申請に切り替えれば早く認可を得られるという利点もありますが、現状では大変内容の厳しい質問状が発行される可能性がこれまで以上に考えられます。前々回の記事でも触れ、また次回の記事でも続きで紹介しますが、これまでにはない質問状が多発している現状がありますので、プレミアム申請にアップグレードする場合は、最新の移民局による審査傾向の元、タイミングなど、より戦略的に対応することが望ましいでしょう。

さて、その質問状について、レベル1のポジション(特定の地域及びポジションに対する賃金レベルの4段階のうち、レベル1がエントリーレベルポジションに相当)の賃金額に基づいて認証されたLCA(労働局発行の労働認定証)とともに提出した新規H-1B申請に対し、質問状が多発しています。今後、同内容の質問状が延長、転職のH-1B申請においても発行され始める、と予想しています。