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2018年度の新規H-1Bビザ申請が受け付け上限に到達

既にご存知の方も多いかと思いますが、アメリカ移民局 (USCIS)は、 2018年度新規H-1Bビザ申請について、2017年4月7日、年間上限枠数である65,000件に達するH-1Bビザ申請を受けたと発表しました。更に、H-1Bビザにはアメリカの修士号以上をもつ申請者を対象としたいわゆる20,000件のマスター枠(追加枠)があるのですが、こちらも同様に年間上限枠に到達したとのことです。

 

今回、2017年4月3日より受付が開始され、最初の5営業日が正式な申請受付期間として定められていました。この5日間で、アメリカ移民局は、マスター枠を含め199、000件の新規H-1Bビザ申請書を受け付けたとのことです。

 

早速、アメリカ移民局は、4月11日にコンピューターによる無作為の抽選を実施し、通常枠である65,000件とマスター枠である20,000件に対して正式に受け付ける書類を選びました。なお抽選方法ですが、最初は20,000件のマスター枠に対して抽選が行われ、マスター枠対象者でその最初の抽選に漏れた申請者はその次に行われる65,000件(通常枠)の抽選の対象にもなるため、通常ケースの申請者よりは当選確率は高くなります。

 

なお、抽選に漏れた申請書は、アメリカ移民局より随時が手元に戻ってきます。その戻ってくる書類には抽選で選ばれなかった旨記載された手紙が同封されてくるかと思われますので、その時点で、自身の申請が選ばれなかったことが正式に判明します。なお、申請書と一緒に提出した申請費用はそのまま戻ってきます。こちら移民局からの返送には時間がかかりますので、ご自身の申請が抽選に選ばれたかどうかが最終的に分かるまで数カ月先になる人もいるでしょう。ただ、例えば、申請書と一緒に送った申請費用の小切手が実際にアメリカ移民局より現金化されたかなど、ご自身の銀行口座を確認することで、早めに移民局の動きを確認することはできるかもしれません。

 

さて、今回の総申請数ですが、昨年の236,000件に比べると約15%減っています。その背景には様々な事情があるでしょうが、当選確率が上がることは喜ばしいことです。弊社では、4月16日の半ば頃より正式に抽選に当選した方に対する受領書が郵便で届き始めました。今年は特急申請ができなかったことから、郵便のみでの通知となります。受領書は5月の前半でもまだ届き続けております。移民局により受領書の発行が完了すれば、移民局による当通知があると思われますので、それまでにまだ受領書を受け取っていない方は、もうしばらく待つべきでしょう。

 

なお、この抽選は新規の通常H-1Bビザ申請のみで、既にH-1Bビザを持っている方の延長申請、転職の申請、更には、特定の非営利団体をスポンサーとした新規申請などは対象外となりますので、引き続き、申請は可能です。

トランプ大統領による新たな大統領令の発行によるH-1Bビザへの影響。

2017年4月18日、トランプ大統領は「アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う」をテーマに掲げた新たな大統領令に署名しました。米国移民弁護士協会(AILA)は、この発令は、トランプ政権の望むH-1Bビザプログラム改革へ向けての第一歩と見受けられるものの、現法に基づくH-1Bビザプログラムの内容そのものが直ちに変更されるなど、大勢に影響はないものである、との見解を示しました。簡単に言えば、今回の大統領令の本質は、全てのビザプログラムに関連する政策の見直し、‘申請詐欺と悪用’を根絶する為の変更勧告、更にはH-1Bビザがより高度な知識を持った高給取りの申請者に対して発給されるような仕組みにすることを目的とした内容、と位置付けています。

 

今回の発令を受け、AILA会長ウィリアムA.ストック氏は次のように述べました。「この発表はシェイクスピアのマクベスの格言 “Full of Sound and fury, signifying nothing (猛り狂ううめき声と怒りばかりで、論理的に意味をなすようなものではない)”を思い起こさせます。ちなみに、この発令により移民局はH-1Bプログラムの見直しが求められている一方で、トランプ政権が思い描いている多くの変更の実現には立法装置が必要とされ、少なくとも長期的な立法制定プロセスが必要となります。単なる「うめき声と怒り」ではなく、本当に必要なのはトランプ大統領と議会が移民法改革に真摯に向き合って協力し合い、全ての移民またアメリカ国民に対して望ましいものとなるような21世紀における移民制度を作り上げることです」

 

更にストック氏の言葉は続きます。「我々移民制度はシリコンバレーに対してだけでなく、全ての地域そして産業分野にとって重要であるべきです。H-1Bビザ労働者は全米全州、更にその州それぞれの地方、例えばインディアナ州のボイシ市からノースキャロライナのローリー市・アイオワ州のデモイン市・ネブラスカ州のリンカーン市に至るまで、全ての地域の経済産業に大きく貢献しています。また、H-1Bビザ労働者は医療制度や製造業またエネルギー産業にとっても不可欠ものなのです。この大統領令によってトランプ政権が提案する改革は、単なる当てつけや逸話でなく、事実とデータに基づいて行われるべきであり、H-1Bビザプログラムを含む私たちアメリカ移民制度が、世界的競争力のある労働力を更に強化し維持していくべく、米国の企業にとって真に有効な手段となるものとなることを心から望みます」

 

弊社でも今後のH-1Bビザプログラム改革について多くの質問を受けます。ストック氏の言葉にもあるように、この改革が実行に移されるにしても、その間に多くの議論と立法手続きが必要となり、即の施行となることは考えにくい状況でもあります。ただ、一方で、あくまでも現法において、政府によるビザ申請審査が厳しくなる、詐欺申請防止のための監査(現地査察)が増える(実際に移民局、労働局より発表がありました)ことが想定されます。今後の移民法改革の行方には注目です。