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米国移民局による、2020年度第2四半期の高い質問状の発行について

米国移民局(USCIS)は、雇用者がスポンサーとなる非移民ビザのカテゴリーに関する2020会計年度の第2四半期の統計データを発表しました。そのデータ結果によると、全体的な質問状(RFE)と却下率の発行数の傾向が、雇用ベースのビザ資格を厳格にする目的で施行されたトランプ政権の大統領命令と一致していることが明らかになっています。

【2020年度第2四半期のH-1Bビザ申請に関する統計結果】

2020年度のH-1Bビザ申請における第2四半期の認可率は87.1%で、2019年度の第2四半期と比較すると、約 4%上昇しました。しかし、2015年度の全体的なH-1Bビザ認可率の95.7%と比較するとかなり低いです。

2020年度のH-1Bビザ申請における第2四半期の質問状の発行率は35.8%で、2015年度の22.3%と比較すると、非常に高くなっています。尚、質問状返答後の認可の確率は2020年度第2四半期に68.2%に増率しましたが、これはまだ2015年度の83.2%の認可率をはるかに下回っています。

米国移民局によるH-1Bビザ申請に関する統計結果
2015—2020年度(第2四半期)

会計年度 初回認可 質問状発行 質問状返答後の認可
2020年度(第2四半期) 87.1% 35.8% 68.2%
2019年度(第2四半期) 83.7% 35.3% 58.8%
2018年度(第2四半期) 79% 48.2% 59.5%
2019 84.8% 40.2% 65.4%
2018 84.5% 38% 62.4%
2017 92.6% 21.4% 73.6%
2016 93.9% 20.8% 78.9%
2015 95.7% 22.3% 83.2%

【2020年度第2四半期のL-1ビザ申請に関する統計結果】

2020年度第2四半期のL-1ビザ認可率は74.3%で、2019年度の同時期から増加しています。しかし、これはまだ2015年度の83.7%の認可率をはるかに下回っています。

2020年度のL-1 ビザ申請の質問状発行率は53.6%で、2015年度の34.3%よりも大幅に高くなっています。尚、質問状返答後の認可の確率は55.3%に増加しました。

米国移民局によるL-1ビザ申請に関する統計結果
2015—2020年度(第2四半期)

会計年度 初回認可 質問状発行 質問状返答後の認可
2020年度(第2四半期) 74.3% 53.6% 55.3%
2019年度(第2四半期) 71.8% 53.2% 51.1%
2018年度(第2四半期) 79% 42.6% 52.7%
2019 71.9% 54.3% 50.8%
2018 77.8% 45.6% 52.9%
2017 80.8% 36.2% 49.4%
2016 85% 32.1% 55.6%
2015 83.7% 34.3% 53.5%

【2020年度第2四半期のTNビザ申請に関する統計結果】
2020年度第2四半期のTN認可率は88.7%で、2015年度の95.1%よりも大幅に下回っています。

2020年度第2四半期のTNの質問状発行率は25%でした。質問状返答後の認可の確率は58%で、2015年度と比較しても15%近く低くなっています。

米国移民局によるTNビザ申請に関する統計結果
2015—2020年度(第2四半期)

会計年度 初回認可 質問状発行 質問状返答後の認可
2020年度(第2四半期) 88.7% 25% 58%
2019年度(第2四半期) 88.4% 24.5% 54.8%
2018年度(第2四半期) 85.2% 30.8% 53%
2019 89.8% 24.5% 60.1%
2018 88.2% 28.2% 59.9%
2017 91.6% 22% 64.7%
2016 90.7% 23.6% 64.2%
2015 95.1% 17.3% 74.8%

【2020年度第2四半期のO-1ビザ申請に関する統計結果】
2020年度第2四半期のO-1認可率は89%で、2017年度の最近の94.1%から大幅に低下しています。

2020年度第2四半期のO-1 質問状発行率は30.1%に増加しました。質問状返答後の認可の確率は64.8%に減少しました。

米国移民局によるO-1/O-2ビザ申請に関する統計結果
2015—2020年度(第2四半期)

会計年度 初回認可 質問状発行 質問状返答後の認可
2020年度(第2四半期) 89% 30.1% 64.8%
2019年度(第2四半期) 90.5% 27.7% 67%
2018年度(第2四半期) 93.2% 21.8% 69.3%
2019 90.8% 26.4% 66.1%
2018 92.8% 22.9% 69.3%
2017 94.1% 22% 74%
2016 92.9% 22.6% 70%
2015 92% 24.9% 69%

この統計結果から分かること

これらの傾向から分かる重要な点は、トランプ政権下による大統領命令 “アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う(通称:Buy American and Hire American)” が実現に向かっていることです。尚、H-1B、L-1、およびTNビザ申請の結果には小さな改善がありましたが、質問状発行率は増加したか、高いレベルにとどまっていました。

この大統領命令の目的は、国土安全保障省と労働省に、H-1BとL-1ビザを含むビザ保持者の非移民労働者が米国の労働者に与える影響を見直すことです。尚、この統計から推測出来ることは、将来、より高い確率の質問状発行や却下などが見込まれ、 非移民の雇用カテゴリーに対して制限がかかることでしょう。尚、弊社では、引き続き、皆様にこの問題に関する最新情報を随時報告できればと考えております。

米国移民局の柔軟な対応政策の延長について

米国移民局(USCIS)は、2020年3月30日に発表したコロナウイルス(COVID-19)対策に関する柔軟な対応に関して、以下の特定の事項に関する申請者およびスポンサー企業をサポートするため、対応の延長をするということです。

  • 質問状
  • 証拠要求の延長 (N-14)
  • 却下予定通知書
  • 取り消し予定通知書
  • 取り消し予定通知書と地域投資センターの終了予定通知書
  • 控訴又は申し立て通知書 (I-290B)

理由は、コロナウイルス(COVID-19)とその影響に引き続き対応するためにこの政策が延長されるということです。尚、 上記に記載されている要求および通知書で、記載されている発行日が2020年3月1日から7月1日の間である場合に適用されます。尚、米国移民局は、要求書または通知書に記載された応答期日からカレンダー暦の60日以内に受領した上記の要求および通知書においては、審査並びに応答を検討するということです。

*本記事は5月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

I-9フォーム のリストB書類に関する一時的ポリシーについて

全米各地での自宅自粛規制とコロナウイルスによるオンライン更新サービスの制限により、従業員はI-9フォームのリストB書類における就業資格書類(例:州の自動車運転免許書、身分証明書など)の更新手続きが以前よりも困難になっているようです。このことを踏まえ、国土安全保障省は一時的な政策を発表しているということです。
2020年5月1日以降、2020年3月1日付けまたはその日付以降に期限が切れる就業資格書類で、有効期限が延長されないリストBの書類においては、 I-9フォームの受け入れを許可するのに有効な領収書を従業員が提示した場合と同様に扱われる場合があるということです。
雇用主は、必要に応じてリストBのセクション2の書類情報の追加情報欄に「COVID-19」と記入する必要があります。
ただ、この一時的な政策の終了後90日以内に、従業員は有効で尚且つ期限が切れていない書類を提示する必要があります。 これらの書類が提供された後、雇用主はその書類から番号とその他の必要な書類情報を記録し、 最初の日付と変更された日付を記録する必要があります。
もし発行機関がCOVID-19の影響で期限切れのリストB書類を延長する場合、雇用主はセクション2に書類の有効期限を入力し、追加情報欄に「COVID-19 EXT」と記入する必要があります。この場合、従業員は有効で期限が切れていないリストBの書類を後で提示する必要は無いということです。

*本記事は5月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

米国移民局のフィールドオフィスでの対面サービスの一時停止の延長について

米国移民局(United States Citizenship and Immigration Services: 通称USCIS)は、少なくとも2020年6月3日まで、現地の各フィールドオフィスでの対面サービスを停止すると発表しています。これは、 コロナウィルス(COVID-19)に対する対策で、3月18日に発効されて以来、3度目の延長となります。
米国移民局は、申請サポートセンター(Application Support Centers)での対面の指紋採取や 、現地の各フィールドオフィスでのグリーンカードや米国市民権申請に伴う面接や宣誓式などを引き続き実施しないということです。 尚、米国移民局は、特定の状況にのみ限定的な緊急サービスを提供し続けるということです。米国移民局の閉鎖中に予定されている予約がある外国籍の方は、キャンセルおよび日程変更の通知が郵送される予定です。グリーンカードと米国市民権の面接、宣誓式、および指紋採取の予約は、米国移民局の現地の各フィールドオフィスが対面サービスを再開され次第、自動的にリスケジュールされるようになるということです。

*本記事は5月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

新型コロナウィルス流行におけるビザ取得の状況

2020年5月

世界的に大流行している新型コロナウィルスの感染者数や死亡者数の多さは大変深刻な状況で、経済界に対しても様々な形で悪影響が及んでおり、アメリカ移民業界そのものにも非常に大きな影響が出ています。渡航制限を始め、アメリカ大使館、領事館のビザ業務は一時的にサービスを停止し、またアメリカ移民局も面接や指紋採取など対面によるサービスは停止状態です。先行きも不透明で、例えば、アメリカ移民局は現状6月4日以降に対面サービスを再開の予定にはしていますが、延長される可能性もあります。ビザ保持者を抱える企業またビザの新規取得やステイタス延長を必要とするビザ保持者の多くが途方にくれています。その一方で、移民問題の厳格化を一つの公約としているトランプ政権は、一部をのぞき、劇的な法的緩和策をとっていない、という事実も存在しているようです。

世界的に大流行している新型コロナウイルスにより、米国の移民政策に影響を与える変更が様々な形で生じています。今回はそれら影響について、皆さんに直接関係する主な事項をいくつか取り上げてみたいと思います。

  1. 4月22日、トランプ大統領は先60日間アメリカ国外でのアメリカ永住権の発行を停止する大統領令に署名しました。現在、在外アメリカ大使館での永住権申請審査サービスは停止しているため、影響は感じられないと判断されるかもしれませんが、これはあくまでも一つの入り口に過ぎず、今後は対象とするビザ種類の拡大、また期間の延長など考えられます。とりわけ、失業者が多く出ているアメリカにおいて、トランプ政権はアメリカ人の雇用を最優先することから、この新型コロナウィルス問題とともに更なるビザ取得の厳格化が予想されます。一方で、H-1B, L-1,Eビザなどの非移民ビザや既に永住権を持っている方々に対しては現状影響はない、とのことです。尚、この60日間の永住権の発行停止について、アメリカ市民の配偶者や子供、投資を通しての永住権、医療従事者等々に対する永住権発行は引き続き行うこと、となっています。
  2. 3月20日よりアメリカ移民局での特急審査が一時停止状態となっております。これは、無期限の停止で、いつ再開するか不透明な状況です。全てのI-129(H,L-1, E, O-1など)およびI-140申請に対するもので、このことにより申請から最終結果が出るまでのスケジュール感がつかめないことになります。ビザの種類によっては数ヶ月も待ち時間が生じており、更なる長期化も想定されます。
  3. 3月18日より米国移民局の対面による一切のサービスが停止状態となり、サービスの再開は現時点で6月4日以降となっていますが、更なる延長も考えられるでしょう。3月18日以降スケジュールされていたアポイントメントは全てキャンセルされ、今後、移民局は再開の目処がつき次第、リスケジュールされた通知書を送る予定にしています。ただ、キャンセルされたケースの数やその後に追加でスケジュールされるべきケース、またいわゆるソーシャルディスタンシングによる1日の処理能力の低下等を考慮すると、リスケジュールされるにしても、今後、相当の遅れが出ることも予想されます。またオフィスそのものも閉鎖となっており、それには米国移民局の各フィールドオフィス、asylumオフィス、申請サポートセンター(Application Support Centers)や、米国市民権申請に伴う宣誓式などが含まれます。ちなみにアメリカ移民局は、対面ではない、通常の申請書は受付け、審査は行っております。
  4. 在外アメリカ大使館、領事館における米国ビザ業務が一時停止しています。従って、4月や5月など既に面接予約を取っていた方は自動的に面接がキャンセルされることになりました。これは政府が認める緊急のケースを除き、全ての移民、非移民ビザが対象となっています。一方で、該当者のみですが、郵送でのビザ更新は可能で、現在6月以降の面接予約は受け付けている状態です。ただ、こちら早々に枠が埋まっており、今後さらに枠を増やすか、逆に、場合によっては、それら予約も自動キャンセルとなるか、先行き不透明です。尚、このようなキャセルが続く状態でもあることから、これまで3回しかできなかった面接日の変更が6回まで可能となったようです。
  5. 既にビザを取得してアメリカに滞在している人が本来であればアメリカ国外へ出国してアメリカに再入国する、また再度ビザを取得してアメリカに再入国することを予定していた方々が、アメリカ出国を見送る必要性が出たことで、多くの方が、アメリカ移民局への滞在延長申請を余儀なくされています。Eビザ査証またLブランケットに基づくLビザ査証の取得をされた方もアメリカ国内で滞在延長申請は可能です。尚、アメリカ国境管理局に出向いても単純にI-94を延長してもらえることはなく、滞在や就労延長のためには移民局への申請がこれまでのルールと基本的には変わることなく申請を行う必要があります(一部のESTA者は条件を満たせば最大30日の滞在延長が認められます)。
  6. 既にアメリカで雇用を受けているビザ保持者に対し、例えば、H-1Bビザなど、特定の就労場所において、特定のポジションそして業務内容にて、また特定の賃金を受け取ることを大前提として雇用を受けているビザの種類もあります。現在、これに対して基本的には法的緩和策は取られておらず、例えば、在宅勤務への切り替えや業務内容の変更、フルタイムからパートタイムへの雇用形態の変更など、その雇用条件変更の程度によっては、引き続き、移民局への修正申請が求められます。
  7. 一方で、アメリカ移民局は署名入り申請書類の提出に関する柔軟な対応策を発表しました。3月21日付又はそれ以降に提出されたI-129フォーム(非移民ビザ申請書)を含む全ての申請フォームにおいて、原本の署名が複製された書類でも受け付けることを発表しました。尚、 直筆の署名入りの原本が必要なフォームにおいては、米国移民局は電子的に複製されたオリジナルの署名を受け付けるということです。尚、電子的に複製されたオリジナルの署名入りの書類を提出する個人または団体は、直筆署名を含む原本の書類のコピーも保持する必要があるということです。また、3月1日〜5月1日に移民局より質問状を受けたケースは返答猶予期間に対して救済措置が取られました。

以上、弊社でも多くの方から問い合わせを受けます。弊社でもできる限りお客様への明確なアドバイスを心がけてはおりますが、このような状況下、“弊社でも分かりかねます”というアドバイスが選択肢の一つとなっています。1日も早く、状況が終息し、世界の人々がこのウィルスの恐怖から逃れ、経済活動も活性を取り戻し、正常な移民受け入れ体制に戻ることを心から切望しています。

SW Lawグループ、マネジャー
吉窪 智洋