米国市民権権を取得することやアメリカに 居続けられるかどうかは、外国籍の人達にとっては大きな関心事の一つです。”Naturalization(帰化)”と“Permanent residence(永住)”の違いとは何でしょうか。生まれながらにしてアメリカ国籍を持つ人の多くは、NaturalizationとU.S. permanent residence を混同しているようです。Naturalizationとは、米国市民権を申請し取得するための手続きであるのに対して、U.S. permanent residentというのは継続的にアメリカに滞在し、働くことができる資格を得るための手続きを言います。この二つは全く異なります。米国市民には米国永住権保持者では得られない恩恵があります。米国市民権を取得するために長期間にわたり米国に滞在してきた米国永住権保持者ですらその違いに気づいていないこともあり、更に、米国市民になるための手続きには様々な要件が存在するのです。
なぜ外国籍の人々が米国市民権を必要とするのか、 以下3つの理由に分けて紹介していきます。また手続きの際に立ちはだかる3つの潜在的な問題についても触れてみたいと思います。
まず一つ目は、米国市民権を取得することで、海外渡航が簡単になるということ。ほとんどの外国籍の人々は海外渡航に関して制限を持つ国の出身者であり、自国またはアメリカ以外の国へ渡航しようとする場合、事前にビザの取得が求められます 。米国市民としてアメリカのパスポートを持つことで特定の国への渡航の自由度は広がります。迫害などの理由で亡命してきた人は、新たなビザの確認のためや自国を訪れる時に行われる綿密な調査を回避することもできるのです。
二つ目は、米国市民権保持者は、特定の家族をアメリカに移民させたい場合、彼らのスポンサーになることができます。外国籍の人の中には、母親、父親、兄弟、姉妹、子供といった直近の家族がアメリカ国外におり、自らが彼らのスポンサーとなってアメリカに呼び寄せたいと願う人もいます。米国市民権を持つものだけしかアメリカに呼び寄せることができない特定の家族が申請カテゴリーの中には存在します。アメリカへの家族の呼び寄せについて、申請上、家族の種類によって年間発給割り当て数が存在するため、長い待ち時間、また手続きにも遅れが生じている種類もあります。例えばアメリカ永住権保持者も特定の家族のアメリカへの呼び寄せも可能ですが、米国市民に帰化することを最初のステップとすることで、時間の短縮や呼び寄せることのできる家族の幅を広げることが可能となります。国会調査サービスによる家族ベースの移民政策の報告によると、2013年会計年度に米国市民権保持者のスポンサーにより合法的に滞在、就労ができるステイタスを得た人は約650,000人にのぼるとのことです。
三つ目は、米国市民権を得ることで、アメリカで市民としてのあらゆる条件を満たした状態で生活できることです。投票権、陪審員への参加、そして米国市民でなければ不可能なアメリカ政府での仕事にも就くこともできます。米国市民権によって恩恵を得られる可能性は広がりますが、それと同時にアメリカ社会の一員としての責任も求められます。
Naturalizationの申請手続きについて考えるにあたり、注意すべき落とし穴とは何でしょうか?
ほとんどの米国市民権申請はスムーズに進んでいるようですが、申請者の中にはこれまでの犯罪歴や状況が米国市民権の取得にどのように影響を及ぼすかについて留意すべき方々もいます。よくある事例は以下の通りです。
離婚や養育費の支払い義務について。申請者が負担する離婚歴や養育費の支払い義務がある場合、申請者はそれらが米国市民権の申請に与える影響について考慮する必要があります。現在進行中の支払い義務等があれば、それについて詳細に説明した文書を提出することも有効です。アメリカ政府は、養育費の支払いやその他離婚に関係した支払い義務などの滞留に対しては非常に重要視するため、申請者の米国市民権取得に悪影響を与えかねません。
また刑事事件におけるいかなる逮捕歴や有罪判決も、たとえその事件が完了していたり、すでに最終判決が下されていたとしても、Naturalizationの申請に影響を与える可能性があります。申請者は刑事事件の逮捕歴や有罪判決がNaturalizationの申請に与える影響を認識しておく必要があり、申請の障害となりうるであろう、逮捕なのか有罪判決なのかを決定づける詳細な内容についても十分に確認しておく必要があります。刑事事件であることが決定的な場合、厳しい判断が下される可能性があり、また著しくモラルに反した犯罪であれば、申請に大きな悪影響を与えかねません。
Naturalization申請のタイミングも重要です。米国永住権保有者が米国市民権の申請要件を満たすには、申請者本人が継続的に米国に存在することが絶対条件です。もし申請者が6ヶ月や1年を超えて海外に渡航または居住する場合、米国永住権の申請目的である、居住の継続性を断つことになってしまいます。また アメリカでの必要居住期間を満たす前に申請するなど、申請が早すぎた場合も問題になります。
米国市民権の申請を考える際には、犯罪歴などを持たないようにすること、そして申請の時期についてしっかりと確認することが、途中でつまずくことなくスムーズに手続きを進めるために重要なことと言えるでしょう。