カテゴリー別アーカイブ: 移民ビザ

National Visa Center の誤送信

2015年7月30日、ナショナルビザセンター(NVC)は永住権申請中の申請者に対し、NVCへの最後の連絡をNVCからの連絡から1年内に行ったにもかかわらず、NVCの最後の連絡から1年以上何も返答がなかったことを理由に永住権申請プロセスを停止する旨を記載した通知を2015年7月29日に 誤って発送したと発表しました。

その後、NVCは 対象者に対し、引き続き審査する旨を記した訂正の通知を発送しました。もし自身のケースで、当誤通知を受け取ったにもかかわらず訂正の通知を受けていない場合は、NVCへ連絡を取るようにしてください。

PERM申請に求められる平均賃金額の決定要因とは

 

永住権申請の第一ステップであるPERM申請において、永住権をスポンサーする会社が、オファーする永住権ポジションに対し職務内容及び雇用条件を決定したら、会社が支払うべき平均賃金額を労働局に対してリクエストしなければなりません。この金額は最終的に永住権が取得できた際には会社が支払わなければならない最低の金額でもあり、この平均賃金額について把握することはその後の求人活動を無駄なく進め、また永住権申請の第2ステップ以降の申請をスムーズに進めることができるかどうか等の大変重要な鍵ともなります。

 

労働局はSOCジョブポジション、雇用場所、学歴、職歴、出張の必要性、部下管理の必要性、資格の必要性、外国語能力の必要性等々を基に平均賃金額を決定しますが、現在、その決定には約60日にかかっています。

  1. Occupation Code (SOC) ジョブタイトル

平均賃金額を労働局へリクエストする際、希望のSOCジョブタイトルをリクエストフォームに記載します。これは労働局が参照するポジション一覧にあるジョブタイトルで、スポンサー会社側も各ポジションに対して求められる雇用条件やポジションレベル等を同様に確認することができます。実際、全ての永住権オファーポジションが完全にSOCジョブタイトルに当てはまるとは限らないため、労働局は、希望されたSOCジョブタイトルが実際の永住権申請上のオファーポジション及び職務内容に対して適切かどうかを判断します。

  1. 雇用場所

平均賃金額リクエストには、雇用場所を記入します。平均賃金額は雇用場所によっても異なり、仮に本社と実際の雇用場所が異なる場合は、実際の雇用場所に基づいて賃金額は決定されます。もし雇用場所が特定の状況で複数にまたがる場合などは、本社の所在地に基づいて平均賃金が決定されます。

  1. 学歴、職歴

一旦、ジョブタイトルと雇用場所が決まれば、そのポジションに必要とされる学歴や職歴を平均賃金額リクエストフォームに記載することになります。オファーポジションに対して通常求められる学歴や職歴はSOCから確認できますが、それよりも高い条件設定とすると平均賃金はその分高くなります。例えば、雇用条件として4年生の学士号が一般に求められるポジションに対し、修士号を必要条件とすれば賃金レベルが一段階上がり、更に博士号を必要条件とすると賃金レベルが二段階上がることになるでしょう。また、この条件設定は永住権の申請カテゴリであるEB2(学士号プラス5年の職歴または修士号を雇用条件とする)やEB3(一例として学士号プラス5年未満の職歴を雇用条件とする)を決定する要因ともなります。

  1. 出張の必要性、部下管理の必要性、資格の必要性、外国語能力の必要性

オファーポジションの雇用条件として出張の必要性、部下管理の必要性、資格の必要性、外国語能力の必要性を付ける場合、通常、その条件ごとに賃金レベルが上がります。ただ、ポジションによってはそれら条件が必然である場合もあり、その場合は、賃金レベルは上がらないこともあります。なお、外国語能力を必要条件とする場合、その必要性に対する理由が求められることになるでしょう。

結論

上記の通り、それぞれの要因によって平均賃金額が決定され、オファーポジションに対して雇用条件が増やす、また高学歴や長い職歴を求めるほど、平均賃金額が高くなることになります。より詳しい情報は2009年11月発行のワークシート(平均賃金決定方針)を参考にすると良いでしょう。

2016年度抽選アメリカ永住権プログラムの当選者発表

国務省 (DOS) が2016年度の抽選アメリカ永住権プログラムの当選者を発表しました。この抽選に応募した方は下記リンクから結果を確認することが出来ます。
https://www.dvlottery.state.gov/ESC/(S(thxjqozvqdiihb1wiacm2x2g))/default.aspx

当選した場合、上記のウェブサイト (Entrant Status Check website)より今後のプロセス及び永住権の申請方法について確認できます。なお、当選者はアメリカ国内での永住権保持者へのステータス変更申請もしくは在外アメリカ大使館での申請のどちらかの申請が可能となります。今回の当選は2016年度ですので、申請が可能となるのは、早くても2015年10月1日以降となります。ただ、注意点として、仮に今回の抽選に当選したとしても確実に永住権の申請を進め、永住権を取得できるという保証がない事です。自分自身の当選番号が有効にならない限り申請を前に進める事はできません。なお、自分自身の当選番号が申請できる順番となったかどうかを確認するには、アメリカ国務省が毎月発行しているビザブルテンから確認可能です。

アメリカ国務省は抽選永住権プログラムを通して年間およそ5万の永住権を発行しています。応募は限られた期間のみで2016年度は2014年10月1日から2014年11月3日でした。

なお、 抽選プログラムに対する詐欺も多数しています。不正なウェブサイトが政府の公式なウェブサイトを真似し、応募者や当選者に対して多額な申請料を請求している例も多くあるようです。また、当選することを保証し応募者から様々な個人情報を得ようとする詐欺例も少なくありません。

詐欺に遭わないよう十分気を付けてください。弁護士や専門家などからの法的サービスが必要となることもあるでしょう。不当に抽選に当選したなどと言ってくる業者もあるようですので、特に注意が必要です。サービスに対するお支払いや個人情報を提供する際は常に確認等を怠らないようにしてください。抽選詐欺について詳しくは下記のリンクをご覧ください。

http://www.consumer.ftc.gov/articles/0080-diversity-visa-lottery-scams
http://travel.state.gov/content/visas/english/general/fraud.html.

2015年3月のビザブルテンの発表

米国永住権(移民ビザ)の申請の種類によっては年間の発給数に制限が設けられており、その制限数以上の申請がある場合、永住権の最終段階(アメリカ国内でのAOS申請もしくは米国外でのアメリカ大使館での面接を通しての申請)へ進むことができない場合があり、このビザブルテンを通して、自分自身の永住権申請のスタート日に対し、永住権申請の最終段階へ進めことができるかを確認することができます。ビザブルテンにはカットオフデート(優先締切日)としてその日付が記されており、自分自身の永住権申請のスタートの日(プライオリティーディーデート(優先日))と比較することで、自分自身の申請が最終段階へ進めるかを確認できるというわけです。基本的に家族ベースの申請であれば移民局に申請書(I-130申請など)を提出した日、雇用ベースの申請であれば、労働認定書(PERM)を労働局に提出した日になります。逆に言えば、自分自身のプライオリティーデートがカットオフデートに到達していなければ、最終段階へ進めず、待ちの状態が続くことを意味します。なお、このビザブルテンは毎月発表され、それなりの優先日の動きを確認することができます。

 

3月ビザブルテンに記載された優先日の動き

  • インド人向けのEB-2 カテゴリーが16ヶ月進む(2005年9月1日=>2007年1月1日)
  • インド、中国、メキシコ、フィリピンを除く全世界の申請者向けの EB-3カテゴリーが5ヶ月進む (2014年1月1日=>2014年6月1日)
  • 中国人向けのEB-2カテゴリーが6ヶ月進む(2010年9月1日へ)
  • 中国人向けのEB-3カテゴリーは現在では中国向けのEB-2カテゴリーよりプライオリティーデートが進んでいる。

 

雇用ベース

(EB)

右に記載されていない国 中国大陸 生まれ インド メキシコ フィリピン
第1カテゴリー 有効 有効 有効 有効 有効
第2カテゴリー 有効 2010年

9月1日

2007年

1月1日

有効 有効
第3カテゴリー 2014年

6月1日

2011年

10月22日

2004年

1月1日

2014年

6月1日

2014年

6月1日

その他の

労働者

2014年

6月1日

2005年

8月15日

2004年

1月1日

2014年

6月1日

2014年

6月1日

第4カテゴリー 有効 有効 有効 有効 有効
特定の宗教労働者 有効 有効 有効 有効 有効
第5カテゴリー 有効 有効 有効 有効 有効

 

インド人向けのEB-2カテゴリーの日付は大幅に以前と比べて早まりましたが、実質的には未だ8年もの遅れがあります。その一方、EB-5 カテゴリーの移民投資プログラムは変わらず有効な状況が続いていますが、今後、街の状況が発生する可能性はあります。

このような状況下、国務省は先3ヶ月について、次のような予測をしています。

雇用ベース第2カテゴリー:

  • インド、中国、メキシコ、フィリピンを除く全世界の申請者向けのカテゴリーは引き続き有効の状態が続く
  • 中国人向けは月ごとに3−6週間前進する
  • インド人向けは4−6ヶ月前進する

雇用ベース第3カテゴリー:

  • インド、中国、メキシコ、フィリピンを除く全世界の申請者向けのカテゴリーは次の数ヶ月で急速に前進する
  • 中国人向けは今後数ヶ月で急速に前進するものの、需要の増加 も予想されていることから、6カ月以内にカットオフデートに調整が入る
  • インド人向けは最大で2週間前進する
  • メキシコ人向け はインド、中国、フィリピンを除く全世界の申請者向けのカテゴリーと同様の動き
  • フィリピン人向けはインド、中国、メキシコを除く全世界の申請者向けのカテゴリーと同様の動き

尚、このカットオフデートは常に前に進むだけではなく、日付が後退することもありますので、雇用者、被雇用者ともにそれに合わせた計画が必要となります。

米国外での指紋採取について

再入国許可申請(Re-Entry Permit申請)またグリーンカードの更新申請を行った方はご存知かと思いますが、申請書の提出後、米国内で指紋採取を行わなければなりません。この現状は、とりわけ一時的に米国外を生活拠点としている申請者にとっては非常に不憫な状況となっています。代理人として申請書を作成している我々もこの状況は改善されないものかと常々思っているところでもあります。

そのような状況下、移民局より非常に興味のある発言がありました。その内容によれば、現在、移民局は、一般的に海外で審査することのできる申請の種類に対してのみ米国外での指紋採取を可能としている一方、申請者が自国など米国外でのオフィスで指紋採取ができればいかに負担が減るかについて十分理解しており、その事が大きな弊害となっていることもまた理解している、とのことです。それらを踏まえ、 再入国許可申請やグリーンカードの更新申請を行った申請者が米国外のオフィスで指紋採取が行えるよう方針の見直しを行う、とのことで、実際、局内ではそのレビューが終了し、近く、好ましい発表があるかもしれません。少なくとも移民局がこの問題を認識しているという現状はとても良い状況と言えるでしょう。

指紋通知書発行の遅れ

永住権保持者へのアメリカ国内でのステータス変更申請、永住権が認可されるまでの就労許可申請及び渡航許可申請、永住権の更新申請、更には永住権保持者が一時期米国を離れる際に申請する再入国許可申請等、申請プロセスの一つとして申請者は移民局指定のローカルの移民局オフィスにて指紋採取を行う必要があります。

最近、移民局のバーモントサービスセンターが米国移民弁護士協会へ報告した内容によると、現在、指紋採取のスケジュールシステムに問題が発生しているとの事です。米国東海岸に在住の申請者であれば、移民局のバーモントサービスセンターが管轄しているのですが、東海岸の在住者で、2014年12月から 2015年1月に申請したケースについて、指紋通知書が届かないなどの問題が発生しているようです。 現在、移民局は、専門業者を雇い、問題解決に取り組んでおり、2015年2月12日辺りには、当問題によって通知書をまだ受け取っていない申請者に対して指紋採取要請の通知書を発送できる予定となっています。

米国移民局を通してのI-130申請書の審査状況

I-130申請とは、配偶者や21歳以上の子供など家族をスポンサーとして永住権を申請する最初の申請ステップですが、この申請は、限られた状況においては、在外アメリカ大使館へ申請する事ができ、そこから管轄の米国移民局へ審査可能かのリクエストがなされます。現状、仮にI-130申請者が在外の米国大使館での最終インタビューを希望する申請であっても、全申請の99%において、I-130申請書はアメリカ国内にある米国移民局(シカゴロックボックス)への申請書の提出が求められています。しかし、つい5年程前までは、アメリカ国外に住む申請者は、その居住地を管轄する在外米国大使館を通してこのI-130申請を行う事ができました。このように現在ではほぼ全てのケースにおいて米国移民局への申請が求められる事で、5年程前に比べて、最終的に永住権を取得できるまで、追加で5ヶ月かそれ以上の審査期間を想定しなければならない状況となっています。

このような状況のもと、移民局は特定の緊急事態においては国務省が管轄する在外米国大使館に審査を行う権限を与える事もあります。その特定の緊急事態については下記に示す状況が例としてあげられます:

  • 海外に駐留する米国軍人が新しい任務や勤務地変更について突然指令を受けた場合(この場合、米国軍人がビザのスポンサーとなっている事を想定)
  • 永住権のスポンサーとなる家族または永住権受益者が、即時の渡米を必要とするような医学的な緊急事態に直面している場合
  • 永住権のスポンサーとなる家族または永住権受益者が、個人の安全に対して、差し迫った脅威に直面している場合
  • 永住権受益者が、あと数ヶ月程度で、永住権を取得できる対象年齢でなくなってしまう場合
  • 永住権のスポンサーとなる家族または永住権受益者が永住権申請のための最終面接のために申請を管轄する国を訪れているが、永住権のスポンサーとなる家族がアメリカ人へ帰化したことで、永住権受益者に対して新しい別のカテゴリーでの申請が必要となる場合
  • 永住権のスポンサーとなる家族が子供を養子にしたことで、アメリカへの出国が緊急な事態となっている場合

シカゴロックボックスでフォームへI-130申請書を提出しなければならない申請者は、現在の正しい申請方法について www.uscis.gov/I-130 から情報を入手する事ができます。

なお、ここ12ヶ月(2013年12月1日〜2014年11月30日)において、481件のケースについて特例的に国務省(在外米国大使館)で審査できるよう移民局に対してリクエストが出されました。これらリクエストのうち、388件(80.7%)に対して、国務省での審査が認められました。それら国務省での審査が認められなかった要因としては、ケースが通常のアメリカ国内での移民局審査プロセスがなされる事を前提とした場合、その前にアメリカにどうしても戻らなければならない緊急の状況であることの説明が不十分だった事のようです。もしご自身の申請が米国大使館での審査を可能とするものとなれば、永住権取得までの期間を大幅に短縮する事ができるでしょう。

PERM:雇用と申請要件の近代化を追求する米国労働局

永住権申請の第一ステップとなる労働局への申請は通称PERMと呼ばれ、このPERMが始まって10年が経ちました。労働局はこのPERM申請を通して米国移民外国人労働者の永住雇用に対する労働認定の手続きを管理するとともに、米国で永住権保持者としてこれらの労働者を雇用したい企業の責任範囲についても規制しています。そのような中、ここ10年、米国経済も大きく変動し、それに伴う労働環境およびその需要と供給のバランスにも大きな変化が見られており、PERM申請についても情報技術と科学分野における申請を中心に、昨年度だけで7万件以上もの申請がありました。

しかしながら、ここ最近の情報技術の進化や時代の流れにより多くの業界のニーズや常識に変化が見られ、労働局も様々な指摘を受けている背景がある中、ここまで労働局はPERM申請上の必要要件や審査プロセスや方針に対する見直しをほとんど行っていないのです。

このような状況の変化および指摘に応えるべく、労働局はPERMプログラムおよびそれに関連する規則に対する見直しを開始する予定です。その見直しの一環として、PERMプログラムそのものが米国の労働力の変化に合わせて近代化され、かつ対応できるものの構築を目指すこととしているようです。概要は以下の通りです。

  • 米国内労働力について職種別の労働力不足や余剰の判定を行うオプション、そしてそれら労働力の過不足を整理する方法の確立
  • 米国における求人活動に必要な必要条件を時代の流れに沿ったものとするための新しい実務的な方法の確立
  • 雇用主の義務を明確化し、PERM上のオファーポジションが米国の労働者に完全に開放されていることを保証するための雇用主の義務の明確化
  • 申請プロセスの見直しと特急申請の可能性
  • タイポなど申請上本質的な部分に対する間違いについては修正を認めるなど審査方針の見直しの可能性

米国労働局は、雇用主および企業側のニーズに応えるべく、かつ米国移民システムの本来の目的に合わせたPERMプログラムのデザインの構築を目指し、現PERMシステムの更なる検証を行うこととしています。

PERM申請の現状

雇用を基にした米国永住権申請の第一ステップは一部を除き労働局を通して申請を行うのですが、その申請方法はPERMと呼ばれ、その方法が実施されて10年程になります。
現在このPERMの申請者は法律に則り、ミスなく完璧に情報を記入した申請フォームを提出する事が求められています。例えば、PERMのフォームに記載すべき賃金額についてある弁護士は時給$10.14であるべきところを$10.04と誤って記載した事が理由で、修正の余地なく申請が最終的に却下となった例もあります。このPERMという申請方法が導入される前はハームレスエラールールと呼ばれるのものが存在し、簡単なタイポなどの記入ミスに関しては一旦ケースが却下となっても修正のチャンスを与えられていました。

しかしながら、現時点では最初に提出する時点から完璧な状態でなければならないのです。
例え小さな記入ミスであっても却下となることから、ケースを進める場合は再申請が必要となり、その場合は、改めてのコストと時間を要する事を意味します。現状、PERM申請をされるケースの多くがH-1Bと呼ばれる非移民ビザの7年目以降の延長を有効にすることが求められるケースが多いのですが、仮にこのPERM申請が却下となれば、その権利も失われる事から、H-1Bの7年目以降の延長申請をが必須の方にとってはアメリカでの雇用を続ける事ができない状況も考えられる事から非常に大きな問題と言えます。

近い将来労働局がこの厳しい姿勢を見直し、タイポのような明らかなミスについては修正の余地を与えるような柔軟な体制をとってもらえるよう切に願います。
(ちなみに文中の例は弊社のものではございません。いち弁護士の立場から現状を皆様に分かっていただきたく、記事にしております。)

米国永住権(グリーンカード)取得を希望している外国人労働者の雇用を考えている事業家が、移民法上検討すべき事とは?

米国における事業家による新会社を通しての新ビジネスの開始に際し、事業家としてビジネスを拡大させるために、適任な人材を確保することは非常に需要なポイントです。

例えば、あなたが自身の新事業に対し、投資家から融資を受けたものの、事業拡大には、優秀なソフトウェアエンジニアや建築家を雇う必要性があることとします。これら人材は、自身が持つ情熱と同様、あなたの会社を世界のステージへと持ち上げてくれるような、開発に対する強い気持ちを持っていることが求められます。様々に求人活動を行った結果、あなたは候補者を一名に絞り込むことができました。彼はコーディングや開発に対するエンジニアとしての経験が豊富で、あなたのアイディアを形ある製品に変えることのできる人物であると期待できそうです。そこで、最終面接において、求職者の彼が次のように尋ねてきました。「御社で働く願望はあるのですが、現状、私のH-1Bは残り2年しかありません。もし御社が米国永住権のスポンサーをしていただけるのであれば、その不安もなく安心して働き、御社に貢献できると思うのですが、ご検討していただけますでしょうか」。あなたはこの問いにどう答えますか?

人材を雇用する上で、雇用社側は賃金、労働時間、休暇、保険など、様々に検討しなければならない事項が多くありますが、ここでは移民法上、永住権を申請するスポンサー会社が、財務上注意すべきことに焦点を当てて解説します。現在、雇用を基にした米国永住権取得のためには労働局や移民局への申請が必要で、一般に新会社がその申請プロセスをスムーズに進める事は非常に困難な状況が想定されます。上記の問いに対して、永住権の申請をスポンサーする事を約束する前に、まずは、会社としてどのようなことを念頭においておく必要があるのでしょうか?

以下の3つの質問にどう答える事ができるかが一つの鍵です。

  1. 永住権をスポンサーする会社として、労働局が定める最低賃金額を当該求職者に支払う事ができるか(最低賃金額はポジションや職務内容、就労場所、雇用条件によって異なり、労働局が最終的に査定の上決定します)?
  2. 当該求職者に対し、この最低賃金額を少なくともこの先2、3年支払い続けるだけの資金力が会社にあるか?
  3. この最低賃金額をすぐに支払う予定がないとすれば、会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テスト(下記に説明)をパスするだけの財務能力を証明できるか?

あなたの会社は最低賃金額を支払う事ができるのか?

外国人労働者の米国永住権取得申請のスポンサーとなる会社が行うべき最初の申請ステップは労働局を通して行うPERM申請と呼ばれるものです(ケースによっては免除される申請の種類もある)。PERM申請の前には、実際に永住権申請上のポジションに対し、労働局が求める規則に従って幅広く求人活動を行い、そのポジションの雇用条件(学歴や経歴など)に合う相応しいアメリカ人や米国永住権保持者がいない事を立証して初めてPERMの申請を労働局に対して行う事ができます。実はこの事前に行う求人活動がPERM申請上最も重要なことの一つで、その雇用条件の一つであるオファー賃金額について、労働局が査定して決定する最低賃金額を会社が支払う能力にある状態であるかどうか会社として充分な検討が必要です。現在の移民法では、外国労働者のPERM申請をスポンサーする会社は、既にその最低賃金額を支払っている、又は、米国永住権が認可された時点でその金額を支払う意思があることを財務上示す必要があるのです。

仮に、あなたのスタートアップ会社が家族や友達などで構成された投資家で支えられ、現在の収入がゼロだとします。しかし、もし会社として十分な給与支払い能力があり、その新規採用者となる従業員に労働局の定める最低賃金額を最初から支払う事ができるとすれば米国永住権申請のスポンサーとなることは充分考えられます。一方で、もしスポンサー会社がこの最低賃金額を支払っていなければ、PERM申請が仮に認証されたとしてもその次の申請ステップである移民局を通しての移民申請の段階にて、その会社の財務能力の証明に対して非常に高いハードルに直面する可能性が出てきます。

求職者に対し、最低賃金額を少なくとも先2、3年支払い続けるだけの十分な資金が会社としてあるのか?

予測不可能なスタートアップビジネスにおいて、突然あなたが業界のスーパースターなることもあります。しかし、その可能性とは裏腹に、すぐにその名声は昨日の出来事になる事もあります。そのような望ましくない現実に直面した場合、投資家の会社に対する感心は薄れ、あなたの収入は低くなり、投資家も消え、従業員への給与支払いに困難が生じるなど会社として財政危機に落ち入る事も考えられます。米国の労働者と違い、あなたが雇った外国従業員はビザ上の問題もあり、簡単に会社を辞め、気軽に転職するという選択肢がない場合がほとんどで、約束された最低賃金額の支払いに頼っているのが現状です。あなたの会社の将来がはっきりせず、他社に乗っ取られる可能性があり、または融資が不足する可能性があるとしたら、新規採用予定者の米国永住権申請のスポンサーとなることを約束する事自体、その従業員の将来に危機をもたらす要因ともなり得ます。

PERM申請の下、労働局により査定された最低賃金額を支払える余裕がない場合、あなたの会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テストをパスするだけの財務能力を示す事ができるか?

一般的に小規模なスタートアップ企業がこのテストをパスするのは非常に困難でしょう。しかしあなたが他のビジネスで成功をとげ、銀行に十分な預金があるばかりか、あなたの事業に賛同する投資家が大勢いるとすれば、会社の財政能力を示すためのこのテストをパスするために求められる複雑な立証作業が困難とはならないでしょう。

一般的に移民局は次の三つの基準のうち、一つでもパスすれば、 永住権申請をスポンサーするに値する会社の財政能力があるものと判断します。その中には労働局により査定された最低賃金額を支払っていない場合でも可能な条件もあります。

(1)  純利益:会社の純利益が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(2)  正味流動資産:会社の正味流動資産が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(3)  永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合:当該従業員が受け取っている給与額が、既に永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事。

その他、会社の従業員が100名以上の従業員がいる場合は、財務担当者から会社の財政能力について手紙を出してもらう、また永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合において当該従業員が受け取っている給与額が仮に永住権申請上の最低賃金額を下回っている場合でもそれを補うだけの会社の純利益があり、それを正当に立証できれば、移民局は会社の財政能力を認めるなど、違う形で立証できる事例もあります。

一方、会社が将来的に最低賃金額を支払う予定があることのみどれだけ説明しても、上記立証できなければ、基本的に永住権は認められません。この最低賃金額の会社による支払い能力については、労働局へのPERM申請日まで遡って判断されるため、PERM申請時点において既に上記条件を満たす会社の財政能力が必要であるという訳です。

このように、新会社における永住権申請のスポンサーは財政的に常に意識する事が求められるため、事前に良く計画することが重要で、そこには責任が伴います。今後、永住権のスポンサーを考えている方は、この点に十分注意を払うようにしてください。

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