近年、エンジニアとして渡米する人々にとって、米国国境での問題や混乱が多発しています。
米国でのコスト上昇に伴い、日本やその他の国から外国人労働者を米国での補佐業務として受け入れることが益々に便利になってきています。もちろん、就労ビザの取得が最良の選択肢かもしれませんが、常に可能というわけではありません。B-1ビザはこの商用訪問目的のために限られた状況で使用されることがあります。とりわけ、「就労」と「商用訪問」の境界線はしばしば不明確であるため、外国人訪問者は、ESTAで渡米する際、しばしば問題や遅延、時には米国国境での入国拒否に直面しているようです。
なお、ビジネス・ビジターが適切なB-1ビザを取得すれば、このような問題のほとんどは回避できます。
そこで、まず外務省マニュアル(Foreign Affairs Manual、以下「FAM」)について知る必要があります。これは、米国大使館が法律に基づいてビザ申請者が特定のビザ取得する資格があるかを判断するために使用している基準マニュアルです。
そこで、一つの例として、アメリカにおいて、設備を設置する目的でB-1ビザを取得するためには、以下の基準を満たす必要があります:
- 商業用または工業用設備: 米国外の企業から購入した商用または産業用機器または機械の設置、サービス、修理のために渡米するエンジニアであること
- 契約上の義務: 売買契約において、売り手がそのようなサービスやトレーニングを提供することが明確に義務付けられていること
- 専門知識: エンジニアは、サービスまたはトレーニングを実施する売主に関する契約上の義務に不可欠な専門知識を有していなければならない
- 報酬の源泉: エンジニアは、米国を源泉として報酬を受け取ってはならない。報酬は海外からであること
B-1ビザを取得したエンジニアは以下の業務に従事することができます:
- 設置: 商業用または工業用設備や機械の設置
- サービスおよび修理: 設備機器のメンテナンスまたは修理作業
- トレーニング: 機器の設置、サービス、修理を行うための米国人労働者に対するトレーニング
制限事項:
- 建設作業: B-1ビザの技術者は実際の建設作業を行うことは許可されていない。ただし、建設作業を行う他の労働者を監督またはトレーニングすることは可能
- 米国企業による雇用: 訪問目的は、米国企業または個人による雇用に関わるものであってはならない。また、技術者は米国源泉による給与を受け取ってはならない
必要書類:
B-1ビザを申請する際には、主に以下の書類を用意してください:
- 米国企業からの詳細な紹介状:サービスを必要とする米国企業からの詳細な手紙で、渡米目的、具体的な活動内容、滞在期間等に関する概要を記したもの
- 売買契約書: サービスまたはトレーニングの提供を必要としていることを示す契約書のコピー
- 専門知識の証明: 契約上の義務に不可欠なエンジニアの専門知識を証明するもの
- 報酬源の証明: 技術者に支払われる報酬が、米国を源泉とするものではなく、海外から支払われることを証明するもの
- 一時滞在の証明: 訪問が一時的なものであり、技術者が外国に住居を有し、放棄する意思がないことを証明するもの
入国港(POE)での考慮事項:
米国入国港に到着したら、エンジニアは税関国境保 護局(CBP)職員による入国審査に備える必要があります。
とりわけ、以下の点に注意することが必要でしょう:
- 資格証明: エンジニアは、B-1 要件の中核となる資格の再証明ができるように準備しておくこと
- 書類の提示: 業務訪問に関する全ての関連書類を提示すること
- I-94フォーム: 入国時に、ビザ種と入国期間が記載された電子フォームI-94(出入国記録)が発行される
結論
企業にとって、出張先で行う業務と雇用に該当する業務の線引きは難しいものです。
B-1ビザは、特定の資格基準を満たし、制限を守ることができれば、米国を訪れて設備を設置するエンジニアにとって、実に有効な選択肢となるでしょう。スムーズな米国入国と米国移民法の遵守を確実にするためには、適切な書類作成と準備が極めて重要です。ケースは全てが異なるものです。単純に他のケースを例に取って、誤った解釈を行うことで好ましくない結果をもたらす可能性があります。そういう意味でもB-1にてエンジニアを派遣する予定のある企業は、移民法に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。