カテゴリー別アーカイブ: 非移民ビザ

F-1ビザを保持する外国人学生が新規H-1B申請の結果を待っている間の米国出国について

F-1 ビザを保持している学生が H-1B ビザ申請審査中にアメリカ国外へ出国する場合、ケースによってはアメリカに直ぐに戻って来られないなどのリスクを伴う可能性があります。そのような状況下、アメリカ国外への出国を考えている方は、事前にリスクを把握し、また書類の準備を十分に整えておく事が重要です。

 

特にF-1保持者として2015年4月1日から受付開始された2016年度新規H-1B ビザ申請(F-1からH-1Bへのステイタス変更申請を含むもの)を行った場合、その申請時点から新年度開始日である10月1日までの間にアメリカ国外へ出国する場合は、再入国が直ぐにできないなどのリスクが伴います。実際にその国外への出国が重要なものなのかを改めて見直す必要性もあるかもしれません。

 

該当申請者が国外への出国をどうしても10月1日以降に延期出来ない場合、仮にそれまでに国外へ出国し、10月1日より前にアメリカに戻ろうとした場合、アメリカへの再入国のタイミングや申請状況によってはF-1 ビザステイタスのまま米国に再入国出来ない可能性があります。 その場合、H- 1Bビザが認可される事を前提に、H-1Bビザ査証を取得し、アメリカへ戻ってくる必要性があります。

 

もし具体的な質問等ございましたら、移民法専門弁護士等専門家と事前にお話ししていただく事をお勧めます。

L-1B申請統計データ

本文は  “The N A T I O N A L  F O U N D A T I O N  F O R  A M E R I C A N P O L I C Y”  による抜粋記事(一部編集)です。

 

米国移民局 (米国移民局) による2014年度の統計データによると、高度な専門技術を持つ従業員に与えられるL-1B申請に対する却下率が35%と歴史的な結果が出ました。ちなみに2006年度のL-1B申請却下率はわずか6%で、その後、特に新たな法律が制定されたり、法的解釈が変わったという訳でもなく、2012年度には30%、2013年度には34%と却下率はここ最近で5倍と増えました。

 

このことを受け、スポンサー会社となる雇用主からは米国内で新たな従業員を確保することに加え、技術向上の妨げにもつながるとの声も多々聞かれます。こういった現状で移民局はこの問題に対しL-1Bガイダンス2012年と2014年に設けましたが、現状、移民局は今後新たなガイダンスを設ける見込みはないようです。

 

更に興味深いことに、L-1B申請却下率はステータス延長を希望している申請者に対しての方が高く、L-1B新規申請者の却下率が32%であるのに対しL-1Bステータス延長申請者の却下率は 42%と大きく異なります。最終審査結果が出るまで時間を要することになるRequests for Evidence (質問状)の発行に至っては、2014年度は45% ととても高い数字となっています。この率は2004年度がわずか2%であったことを考えると異常な状況とも言えるでしょう。

 

American Immigration Lawyers Association(アメリカ移民法弁護士協会)の副理事を務めるロバート・ディージー氏は RFE の問題はとても厄介だと考えています。つまり多くのスポンサー会社はそれまでに却下された申請書やRFEを入念に見直し、その問題点を新しい申請書に反映させなければならないためです。しかしながら移民局による却下やRFEの発行基準や解釈が常に変化し、補足資料の要求も肥大化しているため、この戦略は常に妥当とは言えません。

 

弊社では、移民局の傾向を掴み、常に申請書(サポートレター)に反映させています。今回の移民局の統計データと弊社のデートを比較しても明らかに弊社の取り組みは移民局の理解を得られているものと考えております。

 

毎年のように明らかに移民局による審査が厳しくなっている現状、移民局の変化にいかに対応するかが大きな鍵となっています。

 

H-2B プログラムの賃金決定

2014年12月5日、米国連邦第三巡回裁判所は Comite de Apoyo a los Trabajadores Agricolas (CATA) v. Perez について最終判決を出しました。この裁判はH-2B保持者に支払うべき平均賃金額について、本来適用すべき 労働局発行のH-2B 雇用賃金規則ではなく、会社提供賃金調査集によって現行賃金が定められていたことが問題視されていたのですが、今回の判決を受け、労働局は会社提供賃金調査集に基づくH-2B平均賃金の決定を取りやめることとしました。加えて、労働局は、会社提供賃金調査集に基づいて決定された賃金額を使って申請された労働認定書の発行も取りやめることとしました。こちら2014年12月9日 に労働局の正式ホームページによりガイダンスとして発表されました (www.foreignlaborcert.doleta.gov)。当局では H-2B に関する規則制定を更に見直す方針です。
雇用主による特定のH-2Bポジションに対する平均賃金額決定申請に際し、2014年12月8日以降、会社提供賃金調査集に基づいたETA Form 9141(賃金決定のための申請書)が労働局に提出される場合、国民相場賃金センター( NPWC )が厚生労働統計調査(OES)に基づき賃金決定を行うこととしました。

なお、2014年12月8日より前にETA Form 9141 提出を行い、会社提供賃金調査集に基づいた平均賃金の決定を受けた企業は、H-2B申請過程において必要とされている求人活動(労働局を通した求人活動、新聞広告等)についてはその査定金額を使用しても良いとのことですが、会社提供賃金調査集に基づいて決定された賃金を使って申請された労働認定書は発行を受けることはできないでしょう。その代わり、厚生労働統計調査(OES)に基づいた認証を受けることとなるでしょう。
一方、2014年12月8日より前に平均賃金の決定を受けた雇用主の中には、特定の条件のもと、会社提供賃金調査集に基づいた労働認定書の発行が可能となるオプションもあります。詳細は労働局上記ガイダンスからご確認ください。

在外米国大使館・領事館でのLブランケット申請

在外米国大使館・領事館でのブランケットL-1ビザの申請では、査証(ビザスタンプ)と同時に、I-129Sフォームに滞在期限(PED)がスタンプされたものが申請者に発給されます。査証の期限は相互条約に基づき、申請者の国籍によって変わります(3ヶ月〜5年)が、I-129Sフォームの有効期限は3年(延長の場合は2年)とされるのが通常です。実際のI-94滞在期限は、査証ではなくこのI-129S期限によって決まります。しかし、最近米国移民法弁護士協会(AILA)へ報告された事例では、一部の米国大使館・領事館で、I-129Sの有効期限を査証の期限と同じ期間(最高5年)とするところがあるとのことです。AILAでは、そのような事例があれば報告するようにと協会員に求めています。

看護師の H-1Bビザについて

2015年2月18日、米国移民局 は看護職が H-1B ビザの「専門的職業」の基準を満たしているか否かを述べたメモを公表しました。

H-1B申請に重要な必要要件の一つに申請者が申請ポジションに対して関連した最低4年生大学の学士号(または同等のもの)を持っているかどうかです。このことから、 正看護師は準学士号を取得していれば就ける専門職と言う事で、多くの(登録)正看護師(RN)職はH-1Bの学歴基準に満たしていないと判断され、結果、移民局は多くの正看護師に対する H-1Bビザ申請を却下してきました。

また既に雇用されている他の看護師が学士号を持つそれら施設を通してRNポジションとしてH-1Bを申請する場合においても、認可のハードルは高く、却下の可能性が高い現状があるのです。

そのような状況下、今回のメモには、とりわけ高学歴の看護師にとって好ましい記載事項が含まれています。一つの例として、American Nurses Credentialing Center (ANCC) Magnet Recognition Program が認める健康管理機構で看護職に就く予定のH-1B申請者は審査上、優遇される旨の記載があります。これら健康管理機構や病院施設にて看護師長(ユニット、病棟、クリニック)になるためには、少なくとも学士号を必要条件としています。またこれら施設では特定の期間内に学士号レベルの看護師の割合が8割まで到達できるよう計画もされています。

更に、正看護師の H-1B ビザの取得は一般に難しいと考えられている一方、Advance Practice Registered Nursing (APRN) など上級看護師については H-1B ビザに適していると考えらます。APRN の資格を取得するための必要条件は州単位で決まっていますが、どの州も同じ証明書を発行しています。なお、今回のこのメモにはそれらARRNポジションがリストされています。例を挙げて見ると、正看護助産師 (CNM)、正臨床専門看護師 (CNS)、正ナース・プラクティショナー (CNP)、登録された正麻酔専門看護師 (CRNA) 等です。

今回のメモ発行は特に移民局の審査方針を大きく変えるものではないかもしれませんが、少なくとも移民局は、今回のメモを通して、看護師職がH-1Bでいう専門職であるという見解を持ってもらう手助けとなることでしょう。

H-4保持者(H-1B配偶者)の就労許可取得について

2015年2月24日、米国移民局はH-4保持者(H-1B保持者の配偶者のみ)の雇用に関する次の発表を行いました。

国土安全保障省 (DHS) は、来る2015年5月26日より、雇用ベースにて米国永住権申請を進めている特定のH-1B保持者の配偶者であるH-4保持者(配偶者のみ)にも就労許可を与えることを発表しました。これにともないDHSは法律を改正し、配偶者であるH-1B保持者が以下の条件を満たす場合に就労許可申請条件を満たす事としました。

  • – 雇用ベースの移民請願書(I-140)が認可されているH-1B保持者
  • – 新法 「21st Century Department of Justice Appropriations Authorization Act」により修正された「American Competitiveness in the Twenty-first Century Act of 2000」のセクション 106(a) と (b)に基づいて認可されたH-1B保持者

上記、後者のAct (法律)は、雇用ベースの米国永住権の申請中であるなど特定の条件を満たせば、H-1Bでの滞在期限である丸6年を超えて7年目以降もH-1B保持者としてアメリカに滞在し、就労を可能にするもので、つまりこの法律のもと、H-1Bのステータスで7年目以降の状況にある方が対象となる事を意味します。

DHS は、この新法を通して、永住権取得までの期間、H-1B保持者やその家族が経済上の負担やストレスを抑え、米国社会に上手く溶け込む事が出来る効果があると期待しています。言い換えれば、H-1B保持者が永住権申請中に経済的理由などからアメリカに滞在し続けることを断念する阻害要因を減らし、更に、米国企業の雇用上の混乱も最小限に押さえる事ができると考えています。

法律上、申請資格のある H-4配偶者は就労許可証申請フォームである(Form I-765) 及びそれを裏付ける補足資料を$380の申請費用とともに移民局に提出し、認められれば就労許可証を取得する事ができます。米国移民局 (USCIS) は2015年5月26日から申請の受理を開始する予定としています。一旦就労許可証を取得すれば、それが有効である限りアメリカでの雇用が可能となり、米国移民局 (USCIS)によれば、初年度に多くて179,600件の申請、その後年間約 55,000件の申請を見込んでいます。

H-1B 申請キャップ申請の提出に向けての注意事項

2016年度新規H−1B申請は2015年4月1日より受付が開始されますが、それまで残り2ヶ月を切りました。今年の申請に向けて雇用者に特にご注意して頂きたいのは、1)労働認定(LCA-Labor Certificate Applicationと呼ばれ、H-1B申請書を移民局へ申請する前に事前に労働局より認定してもらう必要のある書類。認定されたLCAは移民局へ提出の必要が有ります)の早めの申請準備と2)必要書類の収集です。

米国移民局は去年、172,500件もの新規H−1B申請書を受け取り、更に、労働局は、4月1日提出に向けて提出されたLCAが前年の20%増だったとも言われています。そのような状況下、今年は申請者の数が更に増えると見込まれているのですが、その増加はLCAの提出が増加することも意味します。したがって、申請を考えている方は、できる限り早い段階で必要書類の収集(企業関連資料、成績証明書、卒業証書、 他必要書類) やLCAを労働局へ申請することで、より確実に4月1日に向けて申請が可能となるでしょう。特に労働局への事前申請はオンライン上で行うため、混雑も予想され、更に申請から認定まで時間もかかりますので、より計画的な準備が必要です。

卒業の扱いについて:

新規H−1B申請について、移民局は、申請者の資格確認として、基本的に大学からの卒業証書を必要とするのですが、仮に大学からの卒業証書の授与が2015年3月31日までに得られない場合でも学位取得に必要な単位取得が終了していれば、学位授与だけがまだされていないという状況であれば、H−1Bを認可する例もあります。その場合、学校の学部長などからの申請者が学位取得のために全ての要件を達している等の証明書を申請書とともに提出する必要があるでしょう。

F−1(OPT)保持者の2015年9月30日までの雇用:

もしH−1B申請者がF−1ビザのもとオプショナルプラクティカル・トレーニング(OPT) を使って雇用を受けている場合、実際に新規H-1Bを申請する時点でそのOPTが有効である場合は2015年10月1日より前にそのOPT有効期限が切れる場合でも、有効期限の翌日から2015年9月30日(もしくはH-1Bの最終結果が出るまでのどちらか早い日付)までのギャップの期間は継続した雇用が可能となります(学校への届け出が必要)。ただし、H−1B申請時点ではOPTは有効でないもののその有効期限後に与えられる60日の滞在猶予期間(Grace Period)内での申請となる場合は、少なくともH-1Bの結果が出るまでの滞在延長は認められますが、就労は認められませんので、ご注意ください。

 

注意点:

移民局は、一人のH−1B申請者が同じスポンサー会社を通して複数の申請書を提出すると、申請書を却下、又は取り消します。その場合、申請料金は返金されませんのでご注意下さい。以上、今年も多くの申請が殺到し、昨年同様に抽選が予想されています。会社側にとっては、そのような不透明な中での申請となるわけですが、それでも判断が遅れ、4月の最初の5日間の営業日の間に申請を行うことができない場合は、今年の新規H−1Bによる採用ができなくなる可能性もありますので、重ねてご注意下さい。

H-4ビザ保持者の就労許可に関する最新情報

専門技術者としてH-1Bビザを持つ外国人の扶養家族にはH-4ビザが与えられるのですが、現在、H-4保持者という立場である事を基に移民局から就労許可を得る事はできません。そのような状況下、現在、移民局はH-4保持者の就労を可能とする就労許可証(EAD)の申請を認める新しい法制化へむけて最終段階に入っています。

こちら法案によれば、H-1B保持者が永住権申請で求められる3つの申請段階(一部例あり)のうち、第1段階である労働局への労働許可申請(PERM申請)、又は第2段階である移民局へのI-140申請(スポンサー会社の給与支払能力等を含む審査対象)を行ってから365日以上経過したうえで、H−1Bの7年目以降の延長申請が行われている場合、もしくはI-140申請が認可されている場合には、当H-4保持者の就労許可証の申請が可能となる、というものです。
この新しい法律の詳細はまだ決定されておりませんが、近々発表される事となっています。

L-1B ビザの「会社特有の専門能力」に対する定義の変化

L-1 ビザとは米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国において働く場合に適用され、「会社特有の専門能力」(Specialized Knowledge) を必要とされて米国で勤務する場合、L-1Bビザが適用されます。もともと、ここで言う「専門能力」とはビザスポンサー会社の商品、サービス、研究、技術、経営方針等について会社特有の知識を持つ個別的で専門的な知識を意味しているのですが、最近の米国移民局の審査傾向をみると、この「会社特有の専門能力」という定義がより狭く解釈され、米国進出を計画している外国企業によるL-1Bビザ取得がより困難になっているのが現状です。最近の調査によると、約66%ものL-1Bビザ申請に対して追加証拠 (RFE)が求められ、結果、ビザ取得までの審査期間が延びている現実があるとともに、追加証拠を求められた企業の三分の一以上の企業は最終的にL-1Bの申請が却下されているようです。

そこで、今回、このL-1Bの解釈について、Fogo de Chao v. DHS という裁判ケースを紹介します。これはFogo de Chaoというレストラン企業が最近、移民局を相手に起こした裁判で、最高裁判所により文化的に伝統的である、特有の環境下で身につけたものである、または人生経験から直接的に得られた「専門能力」はL-1Bにおける「専門能力」の定義の対象になると裁決しました。この裁判は、国際的に多くのチェーン店を持つブラジルステーキハウスのFogo de Chaoに対するもので、Fogo de Chao は米国に25店舗ものレストランを持ち、それぞれのレストランでは本場の味、例えば、ブラジル南部のリオグランデスル州出身のガウチョ風料理などを客に提供するため、熟練した経験豊富なシェフを雇っていることからもこの勝利は非常に大きいものでした。もちろんこの裁決は自動的に従業員にビザ取得の権利が与えられるということではない一方、文化教育や特有の環境で培った専門知識はL-1Bの「専門能力」の定義として考慮されるという結論を勝ち取ったという意味ではFogo de ChaoのみならずこれからL-1B申請を考えている企業にとっては非常に意味のある結果と言えるでしょう。

Fogo de Chao はそれまで200件以上ものchurrasqueiros と呼ばれるリオグランデスル州出身のシェフにビザを取得させることが出来ていましたが、2010年、アメリカ移民局のバーモントサービスセンターによりあるL−1Bケース申請が却下されてしまいました。移民局 によると、この申請におけるシェフの「専門能力」は移民法で言う「専門」としては適さないと判断を下したもので、その申請上のシェフのもつ能力や技術は特に珍しく、複雑でもなく、シェフであれば誰でもこの技術を習得できるものであると広く解釈しました。これに対し、Fogo de Chao側 は不服申し立てを行いましたが、最終的に不服審判所(Administrative Appeals Office)、更には連邦地方裁判所(Federal District Judge)もこの不服申し立てを認めませんでした。しかし、ワシントンD.C. の巡回裁判においては、このケースにおける文化的知識は「専門能力」の要素として見なされるべきであるとし、Fogo de Chaoを支持したことで、最終的に2対1却下が覆され、不服申し立てが認められる事になりました。

Fogo de Chao側は、アメリカにおいて飲食店が目指す「本場の食を提供するレストラン」になる為には、本場のシェフを置くことが不可欠である、主張しました。シェフはブラジルで直接料理のテクニックやスタイルを学んだ上、最低二年以上ブラジルにあるFogo de Chaoでシェフとして訓練されてきた熟練シェフであるという主張も主張が認められた要因となりました。 Fogoの一番の課題は、移民局がそれまで文化的、環境的影響で得た知識はL-1Bで言う専門的ではなく一般的な知識と考えていことから、シェフが文化的伝統で特有の環境で得た経験がどれだけ専門的な技術として影響を受け、どれほど重要なものなのかを移民局に論理的に立証する事でした。L-1Bビザ申請を行う際、法的解釈が厳しいためか多くの場合、企業は会社特有の知識があるかどうかを探ることから始め、申請の中でそれを明確に主張し説明する事でビザの取得が実現しています。会社特有の知識というのは、その会社の従業員しか得られない知識でもある上、会社内でも特に限られた特別な知識を持つ従業員にしかないものだと移民局は考えていることも、審査が厳しくなっている理由となっています。実際、移民局は専門能力について、一例として、「国際市場において会社の商品またその利用に関する専門知識、または会社の商品など製造プロセスや作業手順に関する高度な知識を持つ外国人であること」と定義づけています。

更に今回の勝利の背景について、Fogo de Chao側は、不服審判所は文化的知識が専門能力であるかどうかを判断できる権限がないと想定していたことに加え、地元のシェフを雇用し訓練させる経済的不自由さそのものが、彼らの持つ知識が専門的である事の具体的な根拠となる最たる理由になる、と主張した事も要因ともなったようです。

今回のこのケースは飲食業界だけではなく、他の業界にも当てはまる問題でもあります。特に日本の企業などは日本文化の影響が強いため、経営方針などが企業により特有とも言えます。そのため、会社特有の専門能力とその定義がどの従業員に当てはまってもおかしくないと言っても過言ではないでしょう。

移民局は長年に渡りL-1Bに関する法律を厳しく解釈し、多数のL-1Bビザ申請を却下してきましたが、Fogo de Chaoケースでは地方の従業員を雇うというプロセスが会社の経済的困難を招いているという絶対的論理が裁決を覆したのです。このケースから考えなければならない事は、この法的解釈がどれだけ広範囲で開放的に捉えることができるか、またビザ申請が却下された際に生まれる企業の経済的困難さの大きさをいかに論理的に分析できるかとも言えるでしょう。Fogo de Chao v. DHSの判決ケースを受け、今後審査側が文化の重要性や特殊性、企業の経済的困難、更には得られた専門能力について幅広く認識し解釈することが期待されます。私個人的にも弊社クライアントのケースに対し応用できる新しいアイデアが得られたと強く実感しています。

SW法律相談所

ブランケットプログラムを通して取得した L-1ビザスタンプの更新について

現在、在外のアメリカ大使館、領事館では、ブランケットプラグラムを通して発行されるL-1ビザスタンプは5年間有効なものです。しかしながら、その一方で、移民法には新規L-1申請における最大就労可能は3年(アメリカにおける会社設立1年以上の会社)と定められていることから、満3年を超えての4年目以降の引き続きの同ステータスによる雇用及びアメリカ滞在延長のためには何らかの形での更新申請が必要な状況です。

そのような状況の中、2014年4月2日の在東京アメリカ大使館による通達によれば、現在5年間有効なL-1ビザスタンプのもと、最大3年の雇用期間後、2年以上のビザスタンプの有効期間を残した状況であっても、アメリカ大使館を通しての申請を通して、ビザスタンプの更新申請が可能となるとの見解を示しました。

移民関税執行局(CBP)は未だに明確な見解を示してはいませんが、今回のアメリカ大使館の見解を受け、この3年を超えての雇用、滞在を可能にするためには、現在ではこのビザスタンプそのものの在外アメリカ大使館、領事館を通しての更新に加え、アメリカ移民局を通しブランケットプラグラムではない個人ベースでのL-1ビザ延長申請を行う2通りの更新方法をとることになるでしょう。

以上のことからも、実際に5年のビザスタンプが発行されたとしても、やはり3年後の更新が何らかの形で必要になることを意味します。むしろ、5年間有効なビザスタンプが発行されていることで、新規にLビザスタンプの認可を受けた従業員が先5年間は一切の更新、延長申請は不要と誤解しやすい状況になってしまっている事実もありますので、引き続き、3年後(又はアメリカ大使館への申請フォーム(I-129S)に記載した雇用リクエスト期間)の更新申請が必要であることを強く認識することはとても大切です。

今後この更新方法について、政府によるより明確な法的説明とその実施方法の見解発表を期待したいと思います。

デビッド シンデル
SW法律事務所