カテゴリー別アーカイブ: 非移民ビザ

看護師の H-1Bビザについて

2015年2月18日、米国移民局 は看護職が H-1B ビザの「専門的職業」の基準を満たしているか否かを述べたメモを公表しました。

H-1B申請に重要な必要要件の一つに申請者が申請ポジションに対して関連した最低4年生大学の学士号(または同等のもの)を持っているかどうかです。このことから、 正看護師は準学士号を取得していれば就ける専門職と言う事で、多くの(登録)正看護師(RN)職はH-1Bの学歴基準に満たしていないと判断され、結果、移民局は多くの正看護師に対する H-1Bビザ申請を却下してきました。

また既に雇用されている他の看護師が学士号を持つそれら施設を通してRNポジションとしてH-1Bを申請する場合においても、認可のハードルは高く、却下の可能性が高い現状があるのです。

そのような状況下、今回のメモには、とりわけ高学歴の看護師にとって好ましい記載事項が含まれています。一つの例として、American Nurses Credentialing Center (ANCC) Magnet Recognition Program が認める健康管理機構で看護職に就く予定のH-1B申請者は審査上、優遇される旨の記載があります。これら健康管理機構や病院施設にて看護師長(ユニット、病棟、クリニック)になるためには、少なくとも学士号を必要条件としています。またこれら施設では特定の期間内に学士号レベルの看護師の割合が8割まで到達できるよう計画もされています。

更に、正看護師の H-1B ビザの取得は一般に難しいと考えられている一方、Advance Practice Registered Nursing (APRN) など上級看護師については H-1B ビザに適していると考えらます。APRN の資格を取得するための必要条件は州単位で決まっていますが、どの州も同じ証明書を発行しています。なお、今回のこのメモにはそれらARRNポジションがリストされています。例を挙げて見ると、正看護助産師 (CNM)、正臨床専門看護師 (CNS)、正ナース・プラクティショナー (CNP)、登録された正麻酔専門看護師 (CRNA) 等です。

今回のメモ発行は特に移民局の審査方針を大きく変えるものではないかもしれませんが、少なくとも移民局は、今回のメモを通して、看護師職がH-1Bでいう専門職であるという見解を持ってもらう手助けとなることでしょう。

H-4保持者(H-1B配偶者)の就労許可取得について

2015年2月24日、米国移民局はH-4保持者(H-1B保持者の配偶者のみ)の雇用に関する次の発表を行いました。

国土安全保障省 (DHS) は、来る2015年5月26日より、雇用ベースにて米国永住権申請を進めている特定のH-1B保持者の配偶者であるH-4保持者(配偶者のみ)にも就労許可を与えることを発表しました。これにともないDHSは法律を改正し、配偶者であるH-1B保持者が以下の条件を満たす場合に就労許可申請条件を満たす事としました。

  • – 雇用ベースの移民請願書(I-140)が認可されているH-1B保持者
  • – 新法 「21st Century Department of Justice Appropriations Authorization Act」により修正された「American Competitiveness in the Twenty-first Century Act of 2000」のセクション 106(a) と (b)に基づいて認可されたH-1B保持者

上記、後者のAct (法律)は、雇用ベースの米国永住権の申請中であるなど特定の条件を満たせば、H-1Bでの滞在期限である丸6年を超えて7年目以降もH-1B保持者としてアメリカに滞在し、就労を可能にするもので、つまりこの法律のもと、H-1Bのステータスで7年目以降の状況にある方が対象となる事を意味します。

DHS は、この新法を通して、永住権取得までの期間、H-1B保持者やその家族が経済上の負担やストレスを抑え、米国社会に上手く溶け込む事が出来る効果があると期待しています。言い換えれば、H-1B保持者が永住権申請中に経済的理由などからアメリカに滞在し続けることを断念する阻害要因を減らし、更に、米国企業の雇用上の混乱も最小限に押さえる事ができると考えています。

法律上、申請資格のある H-4配偶者は就労許可証申請フォームである(Form I-765) 及びそれを裏付ける補足資料を$380の申請費用とともに移民局に提出し、認められれば就労許可証を取得する事ができます。米国移民局 (USCIS) は2015年5月26日から申請の受理を開始する予定としています。一旦就労許可証を取得すれば、それが有効である限りアメリカでの雇用が可能となり、米国移民局 (USCIS)によれば、初年度に多くて179,600件の申請、その後年間約 55,000件の申請を見込んでいます。

H-1B 申請キャップ申請の提出に向けての注意事項

2016年度新規H−1B申請は2015年4月1日より受付が開始されますが、それまで残り2ヶ月を切りました。今年の申請に向けて雇用者に特にご注意して頂きたいのは、1)労働認定(LCA-Labor Certificate Applicationと呼ばれ、H-1B申請書を移民局へ申請する前に事前に労働局より認定してもらう必要のある書類。認定されたLCAは移民局へ提出の必要が有ります)の早めの申請準備と2)必要書類の収集です。

米国移民局は去年、172,500件もの新規H−1B申請書を受け取り、更に、労働局は、4月1日提出に向けて提出されたLCAが前年の20%増だったとも言われています。そのような状況下、今年は申請者の数が更に増えると見込まれているのですが、その増加はLCAの提出が増加することも意味します。したがって、申請を考えている方は、できる限り早い段階で必要書類の収集(企業関連資料、成績証明書、卒業証書、 他必要書類) やLCAを労働局へ申請することで、より確実に4月1日に向けて申請が可能となるでしょう。特に労働局への事前申請はオンライン上で行うため、混雑も予想され、更に申請から認定まで時間もかかりますので、より計画的な準備が必要です。

卒業の扱いについて:

新規H−1B申請について、移民局は、申請者の資格確認として、基本的に大学からの卒業証書を必要とするのですが、仮に大学からの卒業証書の授与が2015年3月31日までに得られない場合でも学位取得に必要な単位取得が終了していれば、学位授与だけがまだされていないという状況であれば、H−1Bを認可する例もあります。その場合、学校の学部長などからの申請者が学位取得のために全ての要件を達している等の証明書を申請書とともに提出する必要があるでしょう。

F−1(OPT)保持者の2015年9月30日までの雇用:

もしH−1B申請者がF−1ビザのもとオプショナルプラクティカル・トレーニング(OPT) を使って雇用を受けている場合、実際に新規H-1Bを申請する時点でそのOPTが有効である場合は2015年10月1日より前にそのOPT有効期限が切れる場合でも、有効期限の翌日から2015年9月30日(もしくはH-1Bの最終結果が出るまでのどちらか早い日付)までのギャップの期間は継続した雇用が可能となります(学校への届け出が必要)。ただし、H−1B申請時点ではOPTは有効でないもののその有効期限後に与えられる60日の滞在猶予期間(Grace Period)内での申請となる場合は、少なくともH-1Bの結果が出るまでの滞在延長は認められますが、就労は認められませんので、ご注意ください。

 

注意点:

移民局は、一人のH−1B申請者が同じスポンサー会社を通して複数の申請書を提出すると、申請書を却下、又は取り消します。その場合、申請料金は返金されませんのでご注意下さい。以上、今年も多くの申請が殺到し、昨年同様に抽選が予想されています。会社側にとっては、そのような不透明な中での申請となるわけですが、それでも判断が遅れ、4月の最初の5日間の営業日の間に申請を行うことができない場合は、今年の新規H−1Bによる採用ができなくなる可能性もありますので、重ねてご注意下さい。

H-4ビザ保持者の就労許可に関する最新情報

専門技術者としてH-1Bビザを持つ外国人の扶養家族にはH-4ビザが与えられるのですが、現在、H-4保持者という立場である事を基に移民局から就労許可を得る事はできません。そのような状況下、現在、移民局はH-4保持者の就労を可能とする就労許可証(EAD)の申請を認める新しい法制化へむけて最終段階に入っています。

こちら法案によれば、H-1B保持者が永住権申請で求められる3つの申請段階(一部例あり)のうち、第1段階である労働局への労働許可申請(PERM申請)、又は第2段階である移民局へのI-140申請(スポンサー会社の給与支払能力等を含む審査対象)を行ってから365日以上経過したうえで、H−1Bの7年目以降の延長申請が行われている場合、もしくはI-140申請が認可されている場合には、当H-4保持者の就労許可証の申請が可能となる、というものです。
この新しい法律の詳細はまだ決定されておりませんが、近々発表される事となっています。

L-1B ビザの「会社特有の専門能力」に対する定義の変化

L-1 ビザとは米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国において働く場合に適用され、「会社特有の専門能力」(Specialized Knowledge) を必要とされて米国で勤務する場合、L-1Bビザが適用されます。もともと、ここで言う「専門能力」とはビザスポンサー会社の商品、サービス、研究、技術、経営方針等について会社特有の知識を持つ個別的で専門的な知識を意味しているのですが、最近の米国移民局の審査傾向をみると、この「会社特有の専門能力」という定義がより狭く解釈され、米国進出を計画している外国企業によるL-1Bビザ取得がより困難になっているのが現状です。最近の調査によると、約66%ものL-1Bビザ申請に対して追加証拠 (RFE)が求められ、結果、ビザ取得までの審査期間が延びている現実があるとともに、追加証拠を求められた企業の三分の一以上の企業は最終的にL-1Bの申請が却下されているようです。

そこで、今回、このL-1Bの解釈について、Fogo de Chao v. DHS という裁判ケースを紹介します。これはFogo de Chaoというレストラン企業が最近、移民局を相手に起こした裁判で、最高裁判所により文化的に伝統的である、特有の環境下で身につけたものである、または人生経験から直接的に得られた「専門能力」はL-1Bにおける「専門能力」の定義の対象になると裁決しました。この裁判は、国際的に多くのチェーン店を持つブラジルステーキハウスのFogo de Chaoに対するもので、Fogo de Chao は米国に25店舗ものレストランを持ち、それぞれのレストランでは本場の味、例えば、ブラジル南部のリオグランデスル州出身のガウチョ風料理などを客に提供するため、熟練した経験豊富なシェフを雇っていることからもこの勝利は非常に大きいものでした。もちろんこの裁決は自動的に従業員にビザ取得の権利が与えられるということではない一方、文化教育や特有の環境で培った専門知識はL-1Bの「専門能力」の定義として考慮されるという結論を勝ち取ったという意味ではFogo de ChaoのみならずこれからL-1B申請を考えている企業にとっては非常に意味のある結果と言えるでしょう。

Fogo de Chao はそれまで200件以上ものchurrasqueiros と呼ばれるリオグランデスル州出身のシェフにビザを取得させることが出来ていましたが、2010年、アメリカ移民局のバーモントサービスセンターによりあるL−1Bケース申請が却下されてしまいました。移民局 によると、この申請におけるシェフの「専門能力」は移民法で言う「専門」としては適さないと判断を下したもので、その申請上のシェフのもつ能力や技術は特に珍しく、複雑でもなく、シェフであれば誰でもこの技術を習得できるものであると広く解釈しました。これに対し、Fogo de Chao側 は不服申し立てを行いましたが、最終的に不服審判所(Administrative Appeals Office)、更には連邦地方裁判所(Federal District Judge)もこの不服申し立てを認めませんでした。しかし、ワシントンD.C. の巡回裁判においては、このケースにおける文化的知識は「専門能力」の要素として見なされるべきであるとし、Fogo de Chaoを支持したことで、最終的に2対1却下が覆され、不服申し立てが認められる事になりました。

Fogo de Chao側は、アメリカにおいて飲食店が目指す「本場の食を提供するレストラン」になる為には、本場のシェフを置くことが不可欠である、主張しました。シェフはブラジルで直接料理のテクニックやスタイルを学んだ上、最低二年以上ブラジルにあるFogo de Chaoでシェフとして訓練されてきた熟練シェフであるという主張も主張が認められた要因となりました。 Fogoの一番の課題は、移民局がそれまで文化的、環境的影響で得た知識はL-1Bで言う専門的ではなく一般的な知識と考えていことから、シェフが文化的伝統で特有の環境で得た経験がどれだけ専門的な技術として影響を受け、どれほど重要なものなのかを移民局に論理的に立証する事でした。L-1Bビザ申請を行う際、法的解釈が厳しいためか多くの場合、企業は会社特有の知識があるかどうかを探ることから始め、申請の中でそれを明確に主張し説明する事でビザの取得が実現しています。会社特有の知識というのは、その会社の従業員しか得られない知識でもある上、会社内でも特に限られた特別な知識を持つ従業員にしかないものだと移民局は考えていることも、審査が厳しくなっている理由となっています。実際、移民局は専門能力について、一例として、「国際市場において会社の商品またその利用に関する専門知識、または会社の商品など製造プロセスや作業手順に関する高度な知識を持つ外国人であること」と定義づけています。

更に今回の勝利の背景について、Fogo de Chao側は、不服審判所は文化的知識が専門能力であるかどうかを判断できる権限がないと想定していたことに加え、地元のシェフを雇用し訓練させる経済的不自由さそのものが、彼らの持つ知識が専門的である事の具体的な根拠となる最たる理由になる、と主張した事も要因ともなったようです。

今回のこのケースは飲食業界だけではなく、他の業界にも当てはまる問題でもあります。特に日本の企業などは日本文化の影響が強いため、経営方針などが企業により特有とも言えます。そのため、会社特有の専門能力とその定義がどの従業員に当てはまってもおかしくないと言っても過言ではないでしょう。

移民局は長年に渡りL-1Bに関する法律を厳しく解釈し、多数のL-1Bビザ申請を却下してきましたが、Fogo de Chaoケースでは地方の従業員を雇うというプロセスが会社の経済的困難を招いているという絶対的論理が裁決を覆したのです。このケースから考えなければならない事は、この法的解釈がどれだけ広範囲で開放的に捉えることができるか、またビザ申請が却下された際に生まれる企業の経済的困難さの大きさをいかに論理的に分析できるかとも言えるでしょう。Fogo de Chao v. DHSの判決ケースを受け、今後審査側が文化の重要性や特殊性、企業の経済的困難、更には得られた専門能力について幅広く認識し解釈することが期待されます。私個人的にも弊社クライアントのケースに対し応用できる新しいアイデアが得られたと強く実感しています。

SW法律相談所

ブランケットプログラムを通して取得した L-1ビザスタンプの更新について

現在、在外のアメリカ大使館、領事館では、ブランケットプラグラムを通して発行されるL-1ビザスタンプは5年間有効なものです。しかしながら、その一方で、移民法には新規L-1申請における最大就労可能は3年(アメリカにおける会社設立1年以上の会社)と定められていることから、満3年を超えての4年目以降の引き続きの同ステータスによる雇用及びアメリカ滞在延長のためには何らかの形での更新申請が必要な状況です。

そのような状況の中、2014年4月2日の在東京アメリカ大使館による通達によれば、現在5年間有効なL-1ビザスタンプのもと、最大3年の雇用期間後、2年以上のビザスタンプの有効期間を残した状況であっても、アメリカ大使館を通しての申請を通して、ビザスタンプの更新申請が可能となるとの見解を示しました。

移民関税執行局(CBP)は未だに明確な見解を示してはいませんが、今回のアメリカ大使館の見解を受け、この3年を超えての雇用、滞在を可能にするためには、現在ではこのビザスタンプそのものの在外アメリカ大使館、領事館を通しての更新に加え、アメリカ移民局を通しブランケットプラグラムではない個人ベースでのL-1ビザ延長申請を行う2通りの更新方法をとることになるでしょう。

以上のことからも、実際に5年のビザスタンプが発行されたとしても、やはり3年後の更新が何らかの形で必要になることを意味します。むしろ、5年間有効なビザスタンプが発行されていることで、新規にLビザスタンプの認可を受けた従業員が先5年間は一切の更新、延長申請は不要と誤解しやすい状況になってしまっている事実もありますので、引き続き、3年後(又はアメリカ大使館への申請フォーム(I-129S)に記載した雇用リクエスト期間)の更新申請が必要であることを強く認識することはとても大切です。

今後この更新方法について、政府によるより明確な法的説明とその実施方法の見解発表を期待したいと思います。

デビッド シンデル
SW法律事務所

2015年度新規H-1B申請が上限に到達。他のビザオプションは?

2014年4月1日より申請受付が開始された来年度新規H-1B申請は受付期間である最初の一週間で年間上限発給数(通常枠:6万5千件、米国修士•博士号枠:2万件、合わせて8万5千件)の倍以上となる172,500件もの申請が押し寄せたことで早々に受付が締め切りとなりました。この状況は弊社でも予想していましたが、移民局は早速4月10日に正式に受領する申請書類を選び出すための無作為抽選を実施しました。その後、無事当選した方々の受領書が移民局より届き始めております。一方、抽選に漏れた申請書に関しては申請書類一式そのものが戻ってくることになります。実際に申請した方が抽選に当選したかどうか判断がつかないこともあるでしょうが、最終的には受領書が届く、または申請書そのものが戻ってくることで、自身の抽選結果を把握することになります。とりわけ特急申請された方で、5月に入っても受領書が届いていないようであれば、抽選に漏れてしまっている可能性が高いようにも思われます。

さて、見事に抽選に当選した方につきましては、今後移民局より正式に審査が開始されるのですが、現在のH-1B申請におけるポジションの傾向、また審査の難易度に関してはどのような状況なのでしょうか? 最近の統計データはまだ確認できておりませんが、はっきり言えることは審査自体が大変厳しくなっているということです。年々認可率は下降する傾向にあり、とりわけコンピューター系以外のポジションに関してはその難易度が高まっているとも言えるでしょう。ちなみに2013年7月の移民局発表によれば、2012年度から2013年度にかけてコンピューター系のH-1B認可者が15%増えているのに対し、それ以外のポジションのH-1B認可数は20%減っているという興味深いデータがあります。

事実、アメリカ労働局の発表においても、コンピューター系のポジションに関するH-1B申請が未だに大多数を占めているということで、2014年度のデータではコンピューター系のポジションが全体の70%を占めたということです。なお、移民局へのH-1B申請のためには予めアメリカ労働局より労働認定(LCA)を受けなければならず、その審査過程において、労働局はポジションや給与額、就労期間など査定、審査します。参考までにコンピューター系以外の職種については5%がそれ以外のエンジニア、また同じく5%がファイナンシャルスペシャリストや会計士などの金融系のポジションと続き、残りの20%がそれら以外の業種、ポジションという全体像となっているようです。

もちろん、コンピューター系のポジションが業界としても活動が活発な分野であることも否めませんが、一方で、移民局による審査傾向においてもコンピューター系以外のポジションは厳しく審査されているということの裏付けとも捉えることはできるでしょう。言い換えれば、いわゆる“ビジネス系”のポジション(オペレーション、ビジネス開発、マーケットリサーチ、パブリックリレーションなど)に対しては審査が難しく、多くの場合、質問状なしにあっさり認可をうけることはとても難しくなっています。セールス系のポジションはここ数年難しい傾向にあった状況で、更に今ではH-1Bでは当然該当するとも考えられるマーケットリサーチ系のポジションが厳しく審査され始めているという事実はビジネス系のH-1Bポジションを考えている方にとっては非常に悩ましい傾向とも言えます。事実、移民局による「エントリーレベルのパブリックリレーションのポジションはH-1Bのポジションに条件として求められる専門職には該当しない」という判断結果を支持する連邦地方裁判所の判例(2014年4月24日)があります。

ではこれらの状況を受け、今後H-1Bビザ申請者・企業はどう対応していくべきなのでしょうか? 抽選、そして厳しい審査状況を踏まえると、特に採用する企業側においてはプランB、つまりバックアッププランを持つことも重要となってくるでしょう。例えば、一社から複数の新規H-1B申請書を提出した企業においては、統計的には半分以下しか抽選に当たらず、結果的に無事に全員認可されたとしてもH-1B従業員による人材確保は実現しません。企業の立場からすれば、EビザやLビザが条件として該当するようであれば、それも検討すべき事項です。またアメリカの大学を卒業した外国人がOPTを使用して就労(正確にはトレーニング)することも可能ですので、条件が整えば、OPT保持者の雇用も考えられます。ただOPTには期限があり、その期限後の継続的雇用に関しては引き続き、問題は残ります。確実性という意味ではやはりアメリカ市民や米国永住権保持者の採用も同時に進めていくことも会社の体力を維持するためにも無視できない状況です。

SW法律事務所

新規H-1B申請中の渡航に関する注意事項

皆さんの中には今年、個人として、また会社として従業員の新規H-1B申請を行った方もいらっしゃるかもしれません。米国移民法は複数の政府機関によって管理されているということもあり、新規H-1B申請を行った場合、結果が下りるまで(又は早々に認可されたとしても、2014年10月1日まで)の間、渡航に制限がでてくるケースがあります。

現在、米国外にお住まいの場合

基本的に、米国外で新規H-1B申請を行う場合、認可が下り次第、米国大使館又は領事館でビザスタンプ申請を行います。H-1B申請中に例えばビザ無しで渡米される場合、その後のH-1Bビザスタンプの取得に悪影響を及ぼす可能性があります。またアメリカ入国そのものに影響を及ぼす可能性(例えば入国拒否など)もあるため、申請中の渡米はなるべく避けた方が良いでしょう。H-1Bは早くても10月1日から有効であることから、それ以前のアメリカ入国に対しては不当にH-1Bに関する就労を行うのではないかなど、本来の入国目的に疑いをかけられる可能性が考えられるためです。

現在、米国内にお住まいの場合

オプション1ステータス変更:米国内にて他のステータスから新規にH-1Bステータスへ変更される場合、H-1B申請中はアメリカ国外へは渡航出来ません。H-1Bが認可された場合、10月1日以降であればアメリカ国外への渡航は可能ですが再入国にはH-1Bビザスタンプが必要となります。その事から、スタンプ取得のため、最初の行き先は日本など母国である事が望ましいです。ビザスタンプ取得後、H-1Bが有効な間は自由に渡航が可能となります。

オプション2アメリカ国外でビザスタンプを取得してアメリカへ再入国するケース:  仮にH-1Bが10月1日より開始されるH-1Bが認可された場合、無事にビザスタンプが取得できていれば、その10日前からアメリカへのH-1Bビザでの入国が可能となります。ビザスタンプ取得後、H-1Bが有効な間は自由に渡航が可能となります。

以上、新規H-1B申請者は渡米には充分気をつけるようにしてください。

SW法律事務所

速報:L-1Bビザの高い却下率

米国移民局は、つい先日、2012-2013年度のL-1B申請に関する受領数、認可数、質問状発行数、却下数について発表しました。L-1ビザとは特定の条件のもと、米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国にて働く場合に適用され、L-1AとL-1Bの2種類に分かれます。L-1AがExecutive及びManager用のビザであるのに対し、L-1BはSpecialized knowledge(会社特有の専門能力)を持つ専門家に対して発行されます。

L-1B申請に関する受領数、認可数、却下数、質問状発行数一覧

年度

サービスセンター

受領数

認可数

却下数

質問状

2012

カリフォルニア

6,784

5,109

75.3%

2,583

38.1%

3,636

53.6%

2012

バーモント

11,956

9,071

75.9%

3,485

29.1%

5,052

42.3%

2012年合計

 

18,740

14,180

75.7%

6,068

32.4%

8,688

46.4%

2013

カリフォルニア

6,642

4,110

61.9%

2,661

40.1%

3,446

51.9%

2013

バーモント

11,081

7,834

70.7%

3,581

32.3%

4,917

44.4%

2013年合計

 

17,723

11,944

67.4%

6,242

35.2%

8,363

47.2% 

総申請数の約50%近くに質問状が発行、35%が最終的に却下

一覧表を見てもお分かりのようにL-1Bビザそのものが非常に取得困難なビザであることを伺わせるのですが、最終的な却下率は2012年から2013年度にかけて約3%増えています。更に2012年度以来、カリフォルニアサービスセンターにおける却下割合がバーモントサービスセンターに比べて顕著であることも見受けられます。更に見ると、両年度とも実に申請の半分近くに対して質問状が発行されていることが分かります。質問状とは申請した書類の内容に対して移民局が追加で情報、資料を要求してくるもので、その返答に更なる負担がかかります。ここで特に興味深いのが質問状発行と却下数の関係で、移民局による却下は通常、質問状発行を通して結論付けられることから、実に質問状を受けた場合の却下率は2012年の約70%から2013年度は75%近くにまで上がっているとも言えるでしょう。

我が社の統計では申請の約95%が認可

弊社では毎年多くのL-1B申請を行っているのですが、残念ながら100%認可という結果ではありません。ケースの種類にもよりますが、質問状が届く割合は移民局の実数である50%近くまでは至らずに済んでいるものの多くのケースで質問状がくると実感しています。また最終的な却下率は約5%程といったところでしょう。移民局による厳しい審査状況は弊社でも実感しており、お客様特有の商品、サービスビザ取得者の専門能力、アメリカでの専門的ポジション、職務内容について、弊社ではお客様からできる限り多くの詳しい情報を収集し、事実に基づいて申請書に正当に反映させるべく多大な時間を使います。弊社で作成する移民局へのサポートレターは一般に20ページ以上で、質問状が来た場合の返答書のレターに関してはそれ以上である場合がほとんどです。ただ、弊社のケースに限らず、会社商品やサービスの特有性やビザ取得者の専門性、アメリカでの専門的活動内容をどれだけ詳細に説明したとしても移民局はその内容に納得せず質問状を発行し、更にその質問状への返答が移民局の理解に及ばなければ却下するという現実があるのです。

この3件に1件が却下になるという現実を受け、各企業はL-1Bでの従業員の派遣についてはビザが認可されない可能性が比較的高い確率で起こり得ることを認識する必要があります。そのことからも各企業とも派遣社員をどのように選任すべきか見直しが必要になるでしょう。またビザ申請にあたっては、その申請準備作業時間だけではなく、質問状がくる可能性があることなどからも派遣予定時期まで十分余裕を持つことも重要でしょう。一方で、もし会社がLブランケットプログラムを持っていれば、移民局を通さない申請であることからも比較的認可の割合は高いように感じられます。

ブランケット L-1ビザとは

規定以上の社員を米国に転勤させている会社はブランケットL-1(総括的申請)ビザの許可申請を行うことができます。会社としてブランケット申請が認められると交替社員が個人でLビザの申請を米国移民局に対して行う必要はなく、手続きも簡略化され申請手続にかかる時間も短縮されるなど、会社にとってはメリットが多いです。ブランケット申請をする資格としては、スポンサーとなる米国の会社が少なくとも1年以上ビジネスを行っており、且つ3ヶ所以上の関係会社をもつ場合で、過去12ヶ月の間に少なくとも10人のL-1ビザ社員を米国に転勤させているか、もしくは米国内にて関連会社合算で2,500万ドル以上の売上がある、もしくは米国内で1,000人以上の従業員を雇用している場合となります。

SW法律事務所

2015年度新規H-1B申請に向けての注意点

皆さんの多くがご存知でしょうが、2014年度(2013年10月1日~2014年9月30日)の新規H-1Bビザ申請は受付開始日の2013年4月1日から5日間で申請数が新規H-1B年間発給上限数に到達したことから正式に申請書類を受け付けるランダム抽選が実施されました(実際、移民局は、この5日間を初日受付期間と設定し、この期間に申請された書類はすべて抽選の対象となりました)。次回は2014年4月1日から申請受け付けが開始される2015年度(2014年10月1日~2015年9月30日)で、今年も早々の受け付け締め切りが予想されています。そこで皆さんの中には今年の申請に対して申請準備をどのように、どのようなタイミングで、またどのような点に注意すべきか、頭を悩ませている方もいるかもしれません。そこで今回はこの申請までのプロセスに焦点をおいて、具体例とともに紹介していきたいと思います。

中でも特に理解に混乱を招くのが、LCAと呼ばれる労働局を通しての申請プロセスで、移民局へH-1B申請を行う前に特定の申請に対して個々に労働局より雇用条件(ポジション、給与額、就労可能期間等)について認証を得なければなりません。このように、LCAは4月1日に向けての移民局申請前に準備を進めなくてはならず、その認証を得るまでにどれほどの時間がかかるか、どのような点に注意すべきかについても十分把握しておく必要があります。

まずは確認まで、2015年度の新規H-1B申請に関し、仮に早々に移民局認可が下りたとしても、就労開始は早くて2014年10月1日からです。また、新規H-1B申請においてリクエストできる最大の就労期間は3年で、多くの方が今年の新規H-1B申請でも最大の3年のH-1B就労期間を基にした申請ができると信じているかもしれません。しかし早々に年間発給上限枠数に到達が予想される2015年度の新規H-1B申請を2014年4月1日の受け付け開始初日に合わせて準備を行うとすれば、その3年という期間の申請は現実的ではありません。なぜならば、このH-1Bの認可期間はLCAでリクエストできる最も長いリクエスト期間の期限日に合わす必要があるためです。詳しく解説します。

まずこのLCAですが、雇用条件等必要な情報をフォームに記入し、労働局へオンライン提出します。その就労可能期間のリクエストを2014年10月1日~2017年10月1日までと設定できれば、問題なく最大期間の3年で認証を得ることができます。しかしこのLCAにリクエストする就労可能期間に対する開始日の設定はその日から遡って180日以内にならなければ設定することはできません。またその就労可能期間も最大で3年間のリクエストとなっています。また提出されたLCAの労働局による認証審査期間は少なくとも7日で、とりわけ多くの申請が殺到する2,3月のこの時期は更に追加で数日の認証審査期間がかかる事が予想されます。では、どのようなタイミングでLCAを提出すべきなのでしょうか。具体例を紹介します。

Mr. John Smithが会社Xを通して2015年度の新規H-1B申請を行うとします。2014年4月1日に移民局に申請書が確実に届くように準備を進めることとし、また翌日サービスを使って3月31日に申請書を発送する計画でいます。ただ先述の通り、この日付から逆算すると少なくともLCAの審査に7日はかかることから仮にぎりぎりに見てLCAを労働局へ3月24日に提出することになります。またLCAの就労可能開始日の設定に対してLCA提出日はそこから遡って180日以内でなければならず、最大をとってもLCA上の就労可能開始設定日は2014年9月20日で、そこからLCA上、最大3年の就労期間をリクエストできることから、就労可能期限日は2017年9月20日となります。2014年度のH-1Bは既に残数がなく、2015年度のH-1Bによる就労は早くて2014年10月1日から開始されることから、最終的に移民局へ申請できる新規H-1Bの就労リクエスト最大期間は2014年10月1日~2017年9月20日となるわけです。なお、LCAの就労可能期間の設定について、これはあくまでも就労可能期間のリクエストであり、仮に9月20日を開始日と設定しても2015年度のH-1B申請であることから2014年10月1日より前の就労開始は認められません。また、移民局申請上の就労リクエスト期間はLCAの就労可能期間以内の期間に限定されることから就労期限は2017年9月20日となるわけです。ただこの例は計画がぎりぎりであることから仮にLCA認証期間が7日より1日でも長くなってしまえば、4月1日の申請に間に合わないリスクを伴っていることを意味します。

一方、Ms. Jane Smithという別の人が会社Yを通して新規H-1Bの申請をするとします。この会社Yは会社Xと異なりギリギリの申請を避けるために期間に十分余裕をもって2014年2月3日にLCAを提出しました。このLCAは無事に7日後の2014年2月10日に認証されたことから4月1日の申請に向けて20日もの余裕ができたことで、一見、十分早めにLCAを提出することが理想的と思われるかもしれません。しかしLCAの180日制限という点から考えると、この例では2014年8月2日がLCA上の就労可能開始日となることから、移民局申請上の就労リクエスト期間は最大で2014年10月1日~2017年8月2日となり、最大3年を移民局へリクエストできるのに対して、期限日をLCAに合わせて前倒しせざるを得ないことから、John Smith氏の例に比べて49日も早くH-1Bの期限を迎えてしまします。

このことからこの二つの例に対して落としどころをどこにするか、つまりいつLCAを申請するかが重要な判断となるわけです。つまり、ギリギリすぎても余裕を持ちすぎてもメリット、デメリットがそれぞれにあります。ではLCA提出のベストなタイミングはいつでしょうか?

上記のことからまず言えることは、どちらの例でも現在の労働局によるLCA認証期間、更には180日制限という状況から、4月1日の申請を前提とすれば3年フルで移民局へ申請することはできないということになります。そのことからまず弊社では、ぎりぎりでのLCA提出は避けるようお勧めいたします。それと同時にLCA提出前からその他申請書類の作業も開始できるようにし、LCAそのものは、2月下旬から3月上旬にかけて提出することが理想的ではないかと考えています。もちろん最終的な判断はお客様に委ねることになりますが、LCA認証後もお客様からLCAに署名をもらったり、それを申請書に加えたりと作業時間も要することとなり、多少の準備期間が必要となることからそのようなLCA提出時期を設けました。結果的に最大3年より1か月前後は期間をロスすることになりますが、ぎりぎりでの申請に起こりうるリスクを考えれば、皆様には理解をいただきたい期間になろうかと思います。

最後に、新規H-1B申請を考えている皆様が具体的に何に注意すべきかまとめてみました。

1.H-1B申請に必要な情報はできるだけ早く用意すること。H-1B申請に必要な情報、資料の収集に際し、ビザスポンサーとなる会社からの情報・資料取得に時間を要するお客様が多くいらっしゃいます。例えば給与額の決定、ポジションや職務内容の決定など、ビザ取得者自身の判断だけでは確定しません。会社の財務情報など極秘資料の提出を躊躇する会社も見られます。それら時間も考慮に入れ、できる限り早い段階からの情報資料収集を念頭に入れることです。

2.LCAに必要な情報を優先的に決定すること。特にこれまでLCAを提出したことがない会社の場合、通常のLCA審査期間に加えて、労働局への会社認証ステップを踏む必要があります。これは労働局が会社のタックス番号と会社名を照合させるなどして会社の存在を認証することを主な目的としており、LCA提出前に会社として一度は行っておかなければならないステップです。通常、会社認証まで数日の労働局による審査期間の想定が必要です。つまり、会社として初めてのH-1B申請の場合(正確には数年前に始まった労働局の新LCAシステム開始以来初めて)は、7日間のLCA認証期間に先駆けて、少なくとも数日間の会社認証のプロセスにかかる時間を考慮する必要があるというわけです。

更に、LCA提出後の7日間の認証審査期間中はその他の書類作成に時間を充てることも可能となることから、まずはLCAに必要な情報(給与額、ポジションなど)を確定させることもまた重要です。

3.LCA提出前の弁護士など専門家との連絡は細目にとること。例えば、H-1B申請には会社が支払うべき最低賃金の設定があります。例えば、お客様がある特定の給与額でポジションをオファーすると決定してもH-1B申請上、最低賃金額を満たさないというような問題がよくあります。このような状況ではLCAそのものも提出に至りません。このように会社が希望とする雇用条件が必ずしもH-1B申請条件に合わないことも多く、弁護士事務所と密に確認を取りながら雇用条件を決定しなければなりません。弁護士事務所からポジションや給与額を決定することはないことから、弁護士事務所のアドバイスを受けて会社側がどれほど柔軟にそれら決定に対応できるかも重要となるため、その確認作業に相当のやりとりと時間がかかることは想定した方が良いでしょう。

最後に、決してパニックにならないことです。先述のように弊社としての理想的なLCA提出のタイミングを紹介しましたが、必ずしも理想通りに進まないこともあるでしょう。まずは、弁護士など専門家に早急に連絡を取れば、状況を精査の上、新規H-1B申請に間に合うよう会社側との連絡も含め、適切な対応を取ることでしょう。