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米国移民局、多くのビザ申請において申請審査の遅延を認める

2018年6月28日、移民局のオンブズマン・ジュリー・カークナー氏は米国移民局が不正防止の審査を強化すると同時に、複数の申請書の審査に遅れが生じていることを認める最新の定例報告書を議会に公表しました。

なお、オンブズマン氏の事務所は独立した企業体で議会によって創立され、その創立目的は、移民申請に関する方針の変更や申請者の援助を促進することです。

審査の遅延について

今回発表の定例報告書には米国移民局の“効率性”を改善するために数々の具体的な計画が盛り込まれておりますが、米国移民局による申請審査は改善されないであろうという見解を認めています。

米国移民局の申請審査の遅延の原因の一つに新しい電子システム管理が挙げられています。以前は紙媒体システムを利用してそれぞれのケースを管理していましたが、主に電子システムを利用するようになったのはつい最近のことです。目的は申請審査の遅れを取り戻すためでしたが、逆にこの新しい管理システム(ELIS)の技術的な問題により更に遅延の被害を大きくすることとなっています。

この問題により特に外国人の身元調査にも影響を及ぼしています。そのため、申請審査に要する時間がより長くなっているのです。

さらに、米国移民局は申請審査の遅延の理由についてはほとんど発表していません。そのため、オンブズマン氏は米国移民局がこの情報を申請者に開示し始めることで自信を取り戻してもらえるよう勧めています。

この遅延による影響は全てのビザのカテゴリーに当てはまりますが、その中でも一番影響を及ぼすのはI-765の就労許可の申請です。というのも、この就労許可を得るために亡命したということを理由にする申請者が増加するのではないかという声が上がっているためです。その他のビザカテゴリーにおいては、審査の遅延等、特にI-485(永住権の申請)とN-400(米国市民権の申請)申請に対して悪影響が大きく出てくると思われます。

米国移民局によるNotices to Appear (NTA)に関する新指針

2018年6月28日、米国移民局(USCIS)はNotices to Appear (NTA:移民裁判所への出頭命令)の発行に関する新しい指針を発表しました。この新指針によって、今後米国移民局がNTAを発行する対象の範囲が以前より広がります。そのため、国外退去可能なケースで、詐欺行為、犯罪行為、又は、ビザ申請など却下されたにも関わらず米国に違法滞在している証拠がある場合の外国人もNTA発行の対象となります。

以前の方針では、米国移民関税執行局(通称ICE:U.S. Immigration and Customs Enforcement)がその役割を担い、米国移民局はビザ申請審査がその役割の中心でした。それが今回の方針転換を受け、米国移民局にもその機能及び権限が持たされた形となります。

米国に合法的に就労又は居住している外国人でも、彼らの滞在延長申請や転職申請が米国移民局による指針の変更によって思いがけず却下されてしまった場合もNTAの発行を受けての国外退去手続きをしなければならないようになります。なお、NTAの発行を受けた外国人は、その内容が、個人の意思に反しているとしても米国を出国することが出来なくなり、移民裁判所に行くことを余儀なくされてしまいます。同様に、最近のUSCIS の規定変更により、滞在を許可するステータスが無効になってしまった留学生もNTA発行の対象となります。なお、2018年5月31日の時点で既に70万以上ものケースが移民裁判機関にて滞りが出ている状況ですので、この新指針は移民法業界また外国人にとって更に大きな影響を与えることになります。

この新指針によって最も気になる点の一つは非移民ビザ(H-1B , L-1 ビザなど)の延長申請等、元のビザの期限を過ぎたにも関わらず申請は引き続き審査中の状態で、アメリカにて合法的に待機しながらも結果的にビザ申請が却下になってしまうケースで、今回のケースでは、その状況もNTA発行の対象となるようです。従って、非移民ビザ等延長申請の必要な方は、元のビザの期限を迎える前に延長申請の最終結果が出ている状況が望ましいと考えられます。

国土安全保障省、オバマ政権による国際起業家に関する規則の取りやめを提案

国土安全保障は、米国への人道的また公的な利益を踏まえ、米国入国を最終的に許可できる裁量権を持っています。2016年のオバマ政権の最終月、国土安全保障省は卓越した企業家を導入する目的で臨時入国許可又は、一時入国に関する規則を改正しました。その企業家達によって経済成長と革新を促進する公的な利益を生み出すことがこの規則改正の狙いで、International Entrepreneurship Rule(国際起業家に関する規則)という名で知られるようになりました。外国国籍者がこの規則で米国に入国する際に必要となる条件は以下の通りです。

  • 企業の少なくとも10%の所有株式を保持していることが最低条件で、加えて
    • 資格を満たす”投資家から少なくとも$250,000 の資金を有する、又は
    • 資格を満たす”政府からの少なくとも$100,000の賞金や助成金を有する(州および連邦の賞金や助成金も受け入れられています)

2017年7月、トランプ政権下、国土安全保障省は国際起業家に関する規則の実施を2018年の3月に遅らせるという規則を掲げました。一方で、2017年12月には、連邦裁判所がこの遅延を無効とした上、米国移民局は国際起業家の入国を許可する申請の受付を開始いたしました。

そのような中、2018年5月25日、国土安全保障省は国際起業家に関する規則を終了すると提案しました。規則の内容自体が広範囲にわたり、米国人労働者や米国人投資家による支援の妨げとなる上、そもそも国際起業家を招き入れる手段には不適切であるということが理由として挙げられています。

なお、国土安全保障省は2018年6月28日付又はそれ以前に受信した、国際起業家に関する規則を終了するという提案に対する諭評を受け入れてはいるようです。

このような状況もあり、多くの外国人米国入国希望者は、米国入国の手段として変動的で不安定な国際起業家に関する規則を利用するより、投資家ビザのE-2ビザや投資家永住権のEB-5ビザ(米国移民局が指定する地域内のプロジェクトに投資をすることで永住権を最短約2年程度で取得できる可能のある申請。その他、様々な条件あり)による申請により期待を寄せています。E-2投資家ビザは米国でのビジネスにおいて相当額の米国外からの資本の投入が必要となり、定期的なビザの更新が必要です。EB-5ビザの永住権保持者は米国での事業において少なくとも10名の米国人労働者を雇い、候補者には少なくとも$1,000,000(場合によっては$500,000)の投資をすること等が必要条件となっています。

2017年 移民法総括

今回は2017年を総括するような記事でまとめたいと思います。皆さんの多くが実感していることかと思いますが、移民法を取り扱う立場として、2017年はある意味、激動の1年と言っても過言ではない年でした。

とりわけ、トランプ政権の誕生を受け、良い意味でも、悪い意味でも様々に影響を受けた方が多くいらっしゃったことでしょう。細かくは数え切れないほどありますが、(1)大統領指令の発行による影響(”Buy American and Hire American” 2017年4月18日発行)、(2)非移民ビザ申請審査の厳格化(厳しい審査状況、質問状の多発、審査の長期化、延長申請も新規申請同様に全ての詳細な審査の実施、等々)、(3)スポンサー企業への突然の監査訪問実施の増加(H-1B, L-1A, L-1Bビザなど)が、身近な主な事項として挙げられます。

具体的には特定の国籍者また関係者の特定のステイタスによるアメリカ入国禁止令の継続的発行(イラン、リビア、ソマリア、イエメンなど)、DACA (deferred Action for Childfood Arival – 若年の不法移民に対する国外強制退去の猶予処分)の廃止(約80万人の若者に影響)、H-1Bビザ申請に対する移民局による質問状の多発(H-1Bビザは高度技術者や高級ポジションのみに利用されるべきとの新方針による影響)、雇用ベースのアメリカ国内での永住権申請者に対する面接実施の復活、等が記憶としての新しいところです。

更に、トランプ政権で掲げる移民法改革優先事項案として、主なものに(1)永住権申請方法の変更(家族ベースの永住権発行数を減らし、雇用ベースの永住権申請をポイント制へ変更)、(2)アメリカの全雇用主へのE-Verifyシステムの実施義務化及びその実施不履行に対する罰則の増加、(3)抽選によるアメリカ永住権発行の廃止、(4)不法滞在者への罰則の厳格化、(5)非移民ビザ審査、発行、履行に対する厳格化(H-1B, L-1A, L-1Bビザ等)等々があり、2018年以降、これらについて何らかの動きが出てくるものと思われます。

このような状況の中、ビザで人材を採用する企業、またビザを取得する本人等全ての方々に伝えたいこととして、今後は、柔軟なアメリカへの人材派遣計画(既に採用している人材の雇用延長も含む)、専門家を通した最新のアメリカ移民法情報の入手、戦略的なビザ申請書類の作成(アメリカ移民局、アメリカ大使館・領事館向け)、ビザ認可後も政府による会社への突然の査察訪問に備えた十分な準備(申請書の内容と実務が一致していること。必要に応じて移民局への修正申請の必要あり)、等これまで以上に重要視し、実行していくべきでしょう。

具体的には、例えば、もう数ヶ月(2018年4月1日)もすれば、新規のH-1B申請受付が開始されます。準備期間を含めると、既に人事計画が進められていてもおかしくない時期でもあろうかと思います。これまでとは異なる姿勢での取り組みが必要となってきます。暗い話が前面に出てきましたが、今後、明るい話が出てくることも期待したいところです。

更に厳格化する移民局申請

移民局を始め、政府のビザの申請審査は年々厳しくなっている現状はこれまでも繰り返しお伝えの通りですが、2017年10月23日に国土安全保障省より発表されたPolicy Guidanceによると、今後、ビザの延長申請においても審査が更に厳しくなることを示すものとなりました。

このPolicy Guidanceは審査官など移民局職員全員への通達で、非移民ビザの延長申請の審査も最初のビザの審査と同レベルでの審査を行うよう通達しているものです。こちら、日本人の多くも保持するL-1やH-1B等も含むほぼ全ての非移民ビザが対象となっております。

トランプ新政権の掲げる移民法改革のもと、移民局職員はその最前線に立っており、移民局ディレクターのFrancis Cissna氏も今回の通達はアメリカ市民の労働局を守ることにつながる方向性を明確にしているものだという見解を示しています。

今回の発表を受け、移民局審査官は、延長申請書を入念に審査することを指示されており、仮に延長申請の内容において、職務内容などの雇用条件につき最初の申請書の内容から変更がない場合においても最初の申請審査と同様のレベルでの審査が必要で、最終結果は同じになるにしても、補足資料も含めて、提出された全ての申請書類の入念な確認審査が必要となったというわけです。

つい最近まで適用されていた移民局ポリシーでは、延長申請書を審査する審査官は、最初の申請書に明らかな間違いや詐欺等がない場合は別として、鍵となる内容に変更がない限りは、最初の申請書を認可した審査官の審査結果を尊重すべきとなっていました。

このことから、延長申請も安心できない状況となり、今後は、質問状発行の多発、また審査の更なる長期化、更には却下の可能性も増えることが予想されます。

また移民局申請に限らず、Eビザなどアメリカ大使館での申請もトランプ新政権の掲げるアメリカ人労働を守ることを伺わせる審査結果も見かけるようになりました。

今後は、延長申請も含め、政府に対するビザ申請は、その申請のタイミングに合わせ、より戦略的で、かつ時間に余裕を持っての申請書作りが求められ、更には最悪の事態に備え、会社もビザの結果に対して柔軟に対応出来る人事体制をとっておくことが重要となることでしょう。

移民局によるビザスポンサー会社への突然の監査訪問の現状

アメリカ移民局は2014年、公式にL-1Aビザ(主にマネジャー、エグゼクティブの駐在)及びR-1(宗教)ビザを持ってアメリカにて就労している外国人に対し、その雇用実態の確認のため、それらビザ保持者のビザスポンサー会社への監査を行う指針を発表しました。こちらH-1Bビザに加えての監査対象ビザの広がりを具体的に示したわけですが、その一方で、ここ最近、L-1ビザのもう一つのL-1B(専門職)に対しても、その後の公式な発表なく会社への突然の監査訪問が実施されているとの報告があります。実際、移民局はこの状況に対するコメントは発表してはおりません。アメリカ移民局は、このL-1Bへの新しい監査対象の広がりについて、とりわけウェブサイトにおいてL-1とだけ明記し、L-1AとL-1Bを区別はしていないことからも、それを根拠に実施しているのではないかとも考えます。

一方で、興味深いことに、アメリカ移民局ウェブサイトには監査は移民局による認可後に行われるとも書いてある一方で、現実態としてL-1Bビザも含め、アメリカ移民局への延長申請を行い、その結果が出る前の審査段階において、監査を受けたとの企業からの報告も上がってきています。これは、新しい傾向です。

このような状況の中、アメリカ弁護士協会は、今後L-1B保持者を対象とした監査が更に増えるとの見解を示しており、更に、これまでは移民局が外注した監査官による監査だったものが、移民局審査官が直接監査を行う実態も示しています。

ここ最近では、ある監査にて特定の対象者に対して一つでも詐欺的な要素が発覚すれば、同社の他のビザ保持者にも監査の範囲が広がることになっているようです。

この傾向は最近顕著に見られるもので、これら監査のL-1B保持者への広がりがトランプ政権の指令が背景あるか否かははっきりしませんが、現状、L-1Bどころか、新政権では全ての関心が非移民ビザ全種類を対象に向けられ始めています。

そこで、特に会社の人事担当、更にはビザ保持者本人が心得ておくべきことは、会社の規模に関わらず、常に突然の監査の対象となっていること、また監査官が来た際に備えて、申請書の内容を常に認識しておくことが大事です。また、H-1B、R-1、L-1A/L-1Bビザに限らず非移民ビザを持つ全従業員が対象の可能性となることを心得ておく方が良いでしょう。

職務内容、就労場所、給与額など、もちろん事実に沿って申請書が作成されているかと思いますが、その内容に矛盾なく雇用されているか確認することです。もし、申請書の内容と異なる変更がある場合は、その度合いに応じて、移民局への修正申請が必要でしょう。一旦、認可されたビザでも監査官が不服と唱えれば、いつでもビザ取り消しの対象となりますので、今後に備えて、注意が必要です。

2017年1月17日施行の新規則について

アメリカ移民局は2017年1月17日施行の新規則について発表しました。
概要としては、非移民ビザ労働者の雇用の前後にグレースピリオド(猶予期間)を設置、永住権申請の最終段階申請であるI-485申請者等が対象で、就労許可証(EAD)の更新申請をその期限前に適切に行った者に対しては、自動的に就労の延長が可能になることになりそうです。

また新規則は、 I-140の取り消しによる影響を緩和するとしています。

I-140申請が認可されて180日以上経過している外国籍者は、雇用者が失業、またはI-140申請を取り消したとしても、自動的に申請を取り消されることはありません。しかし雇用ベースの永住権を得るためには、外国籍者は新たな仕事のオファーや新たなI-140申請が必要となるでしょう。

申請が取り消されたI-140のビザ申請者個人は、取り消し理由が、詐欺、重大な虚偽の申請内容、根本的なPERM労働認定証の 失効や取り消し、またはアメリカ移民局の重大なエラーでない限り、新たなI-140の申請の際、取り消されたI-140申請のプライオリティ・デートを使用することができるでしょう。

最後に、これまでの長年の方針の通り、I-140が審査中の永住権申請者個人は次のステップであるAOS申請が180日以上審査中の状態が続いた場合、一定の条件のもと、新たな雇用先に永住権申請のスポンサーを変更することが可能です。ただしAOS申請後180日間 に審査中のI-140が認可の可能性がある正当なものである必要があります。

新たな雇用許可規則

規則では、E-3、H-1B、 H-1B1、L-1、O-1の非移民保持者が、永住権申請の一つの段階申請であるI-140申請認可後の次の申請段階のI-485申請に進めずプライオリティ・デートが有効になる順番待ちの状態である場合、1年の 雇用許可を申請することを許可しています。言い換えれば、申請した永住権の年間の発給数がすでに埋まっており、なおかつ説得力のある状況の証明ができる場合と言えます。例えば、救急医療であったり雇用者への重大な混乱が生じるなど、雇用許可の必要性を正当化するものです。現時点では、新規則において「説得力のある状況」という用語がどのように定義されるかは不明です。

新たなグレースピリオド(猶予期間)について

外国籍者がE、H-1B、H-1B1、L-1、O-1、TNビザを保有しており、その雇用が有効ビザ期限よりも早めに終了した場合、彼らには有効なビザ期限期間内において最大60日のグレースピリオドが与えられるようです。これは、彼らがその期間内にステータスを延長、変更、維持することを認めるもので、H−1Bにおいては、新たな雇用者への移行及び就労開始も可能となります。

またE、L-1、TNビザ保有者は、現H-1B非移民者の場合と同様に、有効期間内の前後で10日間のグレースピリオドが与えられます。就労準備のため、有効期間開始日の10日前よりアメリカへ入国が可能となり、有効期間終了後は、滞在延長、ステイタス変更またはアメリカを離れる準備として10日間与えられます。

新たな雇用者への変更申請がすでにアメリカ移民局に受領されているH-1B保有者を除き、グレースピリオド期間中の雇用は認められません。

6年を超えてのH-1Bの延長について

長年にわたり、現在H-1Bステイタスでない外国籍者でも7年目の、もしくはそれ以降のH-1B延長 をする場合、その本人が以前にそのステイタスを保有しており、H-1Bにおける有効な残存期間が残っている限り、その申請は可能とされてきました。しかし、新規則ではH−1Bビザ保有者が移民ビザの申請が可能となった日から1年以内にI-485申請や、移民ビザ申請(I-140申請)をしていない場合、延長はできないとしています。

また新規則には以下内容も含まれています。

H-1Bが満6年を迎え7年目以降の1年間有効なH−1B延長申請について、延長申請時点において、申請者のPERM労働認定証が無効となっている、申請者個人のI-140が却下もしくは取り消されている、またはI-485申請か認可または却下されている場合は申請対象外となるようです。

I-140申請が認可後、その認可を180日もしくはそれ以降に取り消されたH-1Bビザ保有者は、そのI-140が詐欺により取り消し、重大な虚偽の申請内容、アメリカ移民局による重大な誤りや取り消し、またPERM労働認定証の根本的な無効化でない限り、3年の延長資格が維持できます。

さらに新規則では、I-485申請者も含め、適時就労許可証(EAD)の更新を申請した外国籍者に対して、自動的に180日の延長就労許可が与えられるようです。ただし、この自動延長は就労許可の更新を考えているH-4、L-2やEビザの配偶者には適用されないようです。

尚、この新規則では、就労許可証申請の審査を90日以内に処理し、また90日以上審査中となっている就労許可証申請に対して、暫定的な就労許可を与えるようアメリカ移民局に要求できる規則は撤廃されるようです。何れにしても政府はこの規則にここ数年従っていませんでした。また政府は就労許可更新申請を現有効期限の6か月前から受け付け開始する予定です。

興味深いことに、この新たな規則はドナルド・トランプ次期大統領の就任前に施行される予定であり、新政権がこの規則の変更や撤回をするかについては、現在のところ示されていません。しかし変更には、フィードバックを提供するための公衆に対する周知と機会が求められており、いかなる実行も即座に行われることはないと言えるでしょう。

以上、本件は、現状で把握していることであり、上記の通り、今後変更される可能性もあり、現段階では施行されているものではありませんことご注意ください。

トランプ氏の当選と移民

アメリカの移民法は確実に重要な変更がなされ、大統領選挙当選を果たしたドナルド・トランプ政権の重要な課題となるでしょう。技能を持った移民に対する反復的なサポートがいくつかなされてきましたが、これまでのトランプ氏のほとんどの発言を見ると、アメリカへの外国籍者入国の際の審査の増加、外国人労働者の認可の抑制、外国人労働者に対する雇用者の義務の増加に関するものがほとんどでした。

トランプ氏のウェブサイトでは、アメリカにおけるメリット、技術そして成功の可能性に基づいて移民を選択することを支援しています。しかしながら、アメリカ人労働者の雇用を優先する移民規制を求めてきました。彼は、H-1Bプログラムの改革を提唱してきましたが、いまだ具体的な提案はしていません。トランプ氏は、アメリカと協定国間における、移民の合理化を図る条項が含まれる主要な協定の再交渉や撤回を求めるとも述べてきました。

またトランプ氏は雇用ベースの非移民ビザと永住権の申請を含む、ビザやグリーンカードの申請の審査を強化し、より優れた管理を奨励するとしています。また、適切な審査が保証されない国では、ビザ発給を一時的に停止することについても明確に支持しています。ただし、移民法のほとんどの変更には議会の承認が必要であり、数年とは言わなくとも、実施までには数ヶ月は要すという点も重要です。

またトランプ氏が、非公式の人口に対して大きなメスを入れると約束していることも懸念されます。彼は200万から300万人の人を国外追放すると約束しています。そのようなことをしようとすれば、私たちの都市には機関銃が必要となるでしょう。またそのようなことになれば大都市の支援が必要となるでしょうし、その前にカリフォルニアやニューヨークのような州で止められるかもしれません。我々はこれらの大都市の市長たちがそれぞれの地域社会への攻撃に抵抗すべく、最善を尽くすことを願っています。いずれにしてもトランプ政権には、このような業務の遂行には数年はかかると思われます。

そうなると、現在合法的にアメリカに滞在する移民をターゲットにする方が簡単と言えます。移民へ影響を及ぼす重要なポジション、司法長官、国務長官、アメリカ移民局(USCIS)長官、米国移民・関税執行局(ICE)長官、入国管理局(CBP)長官、といったポジションが、反移民派イデオロギーや完全な人種差別派の人で占められたりすることも考えられます。さもなければ移民自体、もしくはアメリカに合法的に存在する人たちへの広く甚大な打撃が最も簡単な方法だと考えられます。共和党は、単に都市の移民コミュニティや雇用者を必要としないといった決定をするかもしれません。

我々のわずかな望みは、次期大統領となるトランプ氏自身、ビジネスマンであり、技術の有無にかかわらず多くの移民、非移民を雇用してきました実績があります。そして彼の妻自身が元H-1B保持者であり移民であるということです。彼が積極的に合法移民をについて検討し、高度な技術を持った労働者やアメリカに投資しようとする企業に対して実際に利益をもたらすような変化を提案することが私たちの願いです。

フォームI-9( Employment Eligibility Verification)の改訂について

2016年11月14日、アメリカ移民局はフォームI-9( Employment Eligibility Verification)の改訂版を発行しました。

雇用者は2017年1月22日までに、11/14/2016 N と記載されたものへの書式の移行を完了させなければなりません。それまでは、03/08/2013 N と記載されたものと、新たなバージョンのどちらでも使用可能です。新しいフォームI-9はこちらから入手可能です。
https://www.uscis.gov/sites/default/files/files/form/i-9.pdf

改訂版の変更点には、セクション1にて、「その他使用した名前」ではなく「その他使用した名字」となっており、一部の外国籍者の認証が合理化されています。

その他の変更点は以下の通りです。

  • 情報を確実に入力させるための補助機能の追加(プロンプトの追加)。
  • 複数の作成者や翻訳者の入力が可能。
  • 追加情報を入力するための専用欄の設置。
  • 作成者や翻訳者用の補足ページの設置。

改訂版I-9はパソコンでの入力が、より簡単にできるようになっています。日付入力のためのドロップダウンやカレンダーの追加、各入力項目での画面上での指示表示、説明文全文への簡単なアクセス、そして入力をクリアにしたり、やり直すといった拡張機能が増えています。ただし雇用者はオンラインでの入力が完了した後、フォームを印刷し署名しなければなりません。

他のアメリカ移民局のフォームと同様、I-9の説明書もフォームから分離され、各項目に詳細な説明が表示されるようになりました。

背景として、1986年11月に議会が移民改革法(IRCA)を通過した際にフォームI-9の要件が制定されたことが挙げられます。移民改革法(IRCA)は、身元確認やフォームI-9上の雇用許可なしでアメリカ市民を含むアメリカ国内での雇用を禁止しています。

アメリカ移民局への新たな申請料金

2016年12月23日より、国土安全保障省(DHS)は、特定のアメリカ移民局への申請料金を増額します。申請料金の増額率は概ね8〜60%となります。EB-5グリーンカードプロセスにかかる料金の増額率は145〜186%にも上り、最も顕著な増加となっています。

以下が新たな申請料金表となります。尚、特急審査(premium processing)申請費用の$1,225に変更はありません。

Form 現在の料金 新料金 増額率
Form1-129 Petition for
Nonimmigrant Worker
$325 $460 42%
Form1-140 Petition for Alien
Worker
$580 $700 21%
Form1-485 Application to Adjust Status Includes the cost of concurrently filed Forms
I-765 and 1-131
$985 $1,140 16%
Form1-765 Application for
Employment Authorization
$380 $410 8%
Form1-131-Application for Travel
Document
$360 $575 60%
Form1-539 Application to
Extend/Change Nonimmigrant
Status
$290 $370 28%
Form1-90 Application to Replace
Permanent Resident card
$365 $455 25%
Form N-400 Application for
Naturalization – Standard Applications
$595 $640 8%
Form N-400 Application for
Naturalization -Applications filed by those who meet certain requirements with respect to military service and for those with approved fee waivers
$595 $0 N/A
Form N-400 Application for
Naturalization-Applications filed by those whose family income is greater than 150% and not more than 200%of the Federal Poverty Guidelines
$595 $320 N/A
Form I-526 Immigrant Petition by Alien Entrepreneur $1,500 $3,675 145%
Form I-924 Application for Regional Center Designation under the EB-5 Immigrant Investor Program $6,230 $17,795 186%
Form I-924 Annual Certification of EB-5 Regional Center %0 $3,035 N/A
Biometrics Fee $85 $85 0%

上記の表が示すように、国土安全保障省が新たに徴収する重要な申請料金に、フォーム924A の申請料金があります。これはApplication for Regional Center under the Immigrant Investor Pilot Program申請のためのフォーム924の補足フォームです。このフォームは雇用に基づく移民ビザ・第5優先(EB-5)カテゴリに使用されます。現在、アメリカ移民局はこれについて申請料金を不要としていますが、2016年12月23日より申請料金$3,035が必要となります。